必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和4年測量士補試験No.2の問題文
次のa~eの文は,公共測量に従事する技術者が留意しなければならないことについて述べたものである。明らかに間違っているものだけの組合せはどれか。次の中から選べ。
- 水準測量作業中に,標尺が駐車中の自動車に接触しドアミラーを破損してしまった。警察に連絡するとともに,直ちに測量計画機関へも事故について報告した。
- 局地的な大雨による災害や事故が増えていることから,現地作業に当たっては,気象情報に注意するとともに,作業地域のハザードマップを携行した。
- .測量計画機関が発行した身分を示す証明書は大切なものであるから,私有の土地に立ち入る作業において,証明書の原本ではなく証明書のカラーコピーを携帯した。
- 基準点測量を実施する際,所有者に伐採の許可を得てから観測の支障となる樹木を伐採した。
- 測量計画機関から貸与された測量成果などのデータをコピーした USB メモリを紛失したが,会社にバックアップがあり作業には影響が無かったため,測量計画機関には USB メモリを紛失したことを報告しなかった。
- a,c
- a,d
- b,d
- b,e
- c,e
(令和4年測量士補試験問題集 No2)
令和4年測量士補試験No.2の解答・解説
「測量に関する法規」の分野からの出題になります。
a→正
b→正
c→誤
d→正
e→誤
となります。
誤った組み合わせを選択するので解答は「5」となります。以下、詳しい解説です。
選択肢aについて
『水準測量作業中に,標尺が駐車中の自動車に接触しドアミラーを破損してしまった。警察に連絡するとともに,直ちに測量計画機関へも事故について報告した。』
この文章は正しいです。
国土交通省が定める測量業務共通仕様書(案)の第125条 一時中止の一部に以下の通り記載があります。
契約書第○条第○項の規定により、次の各号に該当する場合において、発注者は受注者に通知し、必要と認める期間、測量業務の全部又は一部を一時中止させることができるものとする。
なお、暴風、豪雨、洪水、高潮、地震、地すべり、落盤、火災、騒乱、暴動その他自然的又は人為的な事象(以下「天災等という。」)による測量業務の中断については、第 134 条臨機の措置により、受注者は適切に対応しなければならない。(5)第三者及びその財産、受注者、使用人等並びに監督職員の安全確保のため必要があると認めた場合
3.前2項の場合において、受注者は測量業務の現場の保全については監督職員の指示に従わなければならない。
上記内容を読み解くと、自然災害・人為的災害どちらにおいても作業中にトラブルが発生した場合は一時中断し、監督職員(測量計画機関)に報告およびその指示に従わなければなりません。
よって選択肢aの文章の行いは正しいです。
選択肢bについて
『局地的な大雨による災害や事故が増えていることから,現地作業に当たっては,気象情報に注意するとともに,作業地域のハザードマップを携行した。』
この文章は正しいです。
国土交通省が定める測量業務共通仕様書(案)の第133条 安全等の確保に以下の通り記載があります。
7.受注者は、屋外で行う測量業務の実施にあたっては豪雨、豪雪、出水、地震、落雷等の自然災害に対して、常に被害を最小限にくい止めるための防災体制を確立しておかなければならない。災害発生時においては第三者及び使用人等の安全確保に努めなければならない。
明記があるわけではありませんが、ハザードマップの携行は「被害を最小限にくい止めるための防災体制」の1つであると考えられます。
よって選択肢bは正しいと考えられます。
その他の防災体としては
- 緊急連絡網の作成
- 避難場所の確認
- KY活動
などが考えられます。
選択肢cについて
『測量計画機関が発行した身分を示す証明書は大切なものであるから,私有の土地に立ち入る作業において,証明書の原本ではなく証明書のカラーコピーを携帯した。』
この文章は間違いです。
国土交通省が定める測量業務共通仕様書(案)の第117条 土地への立ち入りに以下の通り記載があります。
受注者は、第三者の土地への立ち入りに当たっては、あらかじめ身分証明書交付願を発注者に提出し身分証明書の交付を受け、現地立ち入りに際しては、これを常に携帯しなければならない。
なお、受注者は、立ち入り作業完了後 10 日以内(休日等を除く)に身分証明書を発注者に返却しなければならない。
上記文章の中の「これ」とは発注者から交付された身分証明書であると考えられます。
少しこじつけ感がありますが、基本的には「これ=身分証明書そのもの(原本)」であると捉えられますので、カラーコピーは証明書の効力を発揮しません。
ちなみに身分証明書には発注者の割印が押されているため、その点からもカラーコピーが認められていないことがわかります。
(もともと割印はカラーコピーによる複製を防ぐためのものなので…)
よって選択肢cは間違いということになります。
選択肢dについて
『基準点測量を実施する際,所有者に伐採の許可を得てから観測の支障となる樹木を伐採した。』
この文章は正しいです。
国土交通省が定める測量業務共通仕様書(案)の第117条 土地への立ち入りに以下の通り記載があります。
2.受注者は、測量業務実施のため植物伐採、かき、さく等の除去又は土地もしくは工作物を一時使用する時は、あらかじめ監督職員に報告するものとし、報告を受けた監督職員は当該土地所有者及び占有者の許可を得るものとする。
なお、第三者の土地への立ち入りについて、当該土地占有者の許可は、発注者が得るものとするが、監督職員の指示がある場合は受注者はこれに協力しなければならない。
上記文章では、植物の伐採などが必要な場合は監督職員へ報告し、監督職員からその土地などの所有者へ伐採の許可を得るように書かれています。
よって選択肢の文章のように所有者に伐採の許可を得ていれば樹木を伐採しても問題ありません。
よって選択肢dの文章は正しいです。
ただ、当事者間(測量業者と土地の所有者)のみでの許可の手続きを行うことはNGですので必ず監督職員に動いてもらう必要があります。
選択肢eについて
『測量計画機関から貸与された測量成果などのデータをコピーした USB メモリを紛失したが,会社にバックアップがあり作業には影響が無かったため,測量計画機関には USB メモリを紛失したことを報告しなかった。』
この文章は間違いです。
国土交通省が定める測量業務共通仕様書(案)の第131条 守秘義務に以下の通り記載があります。
7.受注者は、当該業務の遂行において貸与された発注者の情報の外部への漏洩若しくは目的外利用が認められ又そのおそれがある場合には、これを速やかに発注者に報告するものとする。
選択肢の文章では、測量計画機関(発注者)が貸与した測量成果などのデータをコピーしたUSBメモリを紛失しています。
もしもこの紛失したUSBメモリを第三者が入手していた場合、情報が漏洩する恐れがあると考えられます。
測量業務共通仕様書では、情報が漏洩した恐れがある場合には速やかに発注者に報告することを求めていますが、選択肢の文章ではその行動を怠っていますね。
よって選択肢の文章は測量業務共通仕様書にのっとった行動をとっていないため、選択肢eは誤りということになります。
令和4年測量士補試験No.2のまとめ
「測量に関する法規」からの出題でした。
公共測量に従事する技術者の留意事項に関する問題は毎年のように出題されていますね。
選択肢の中で誤りの文章は常識的に考えてあまり良くない行動と捉えられるものも多いので、初見でも解きやすい部分は多いと思います。
過去5年分ほど解けば、ほとんどの測量士補試験の測量法に関する問題には対応できると思うのでしっかりと過去問を解いていきましょう!
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