必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和3年測量士補試験No.11の問題文
次の文は,公共測量における水準測量について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。
1.手簿に誤った読定値を記載したので,訂正せずに再観測を行った。
2.観測に際しては,レベルに直射日光が当たらないようにする。
3.標尺は2本1組とし,往観測の出発点に立てた標尺は,復観測の出発点には立てない。
4.路線に見通しのきかない曲がり角があったため,両方の標尺が見える曲がり角にレベルを設置して観測した。
5.やむを得ず1日の観測が固定点で終わる場合,観測の再開時に固定点の異常の有無を点検できるようにする。(令和3年測量士補試験問題集 No11より)
令和3年測量士補試験No.11の解答・解説
「水準測量」の分野からの出題です。
解答は「4」となります。以下、各選択肢の詳しい解説です。
選択肢1について
「手簿に誤った読定値を記載したので,訂正せずに再観測を行った。」
この文章は正しいです。
水準測量のみならず、測量作業においては読定値(観測した値)を訂正してはいけないことになっています。
その主な理由は
- 作業中の不正(ズル)を防ぐため
- 作業中に誤った数値を観測した個所をわかるようにするため
の2つです。
誤った読定値を記載してしまった場合はその記載を訂正・消去せずに、再観測して正しい値を記載します。
選択肢2について
「観測に際しては,レベルに直射日光が当たらないようにする。」
この文章は正しいです。
直射日光がレベルに当たることによって
- 気泡管
- 自動補正装置(コンペンセータ)
の2つに悪い影響を及ぼします。
- 気泡管が膨張して、本来合わせる気泡の位置がズレてしまう。
- 自動補正装置(コンペンセータ)の機能が狂って、水平と捉えるべきではない角度を水平と捉えてしまう。
といった水平方向に対しての誤差が生じてしまう恐れがあるのですね。
そのためなるべく日陰で観測をしたり、日傘を差して観測することが大事です。
日傘を差している様子は、2019年に発行された「近代測量150年記念切手」の上側・右から2番目にも描かれていますね。
下画像が近代測量150年記念切手(郵便局の近代測量150年記念切手のページより参照)
選択肢3について
「標尺は2本1組とし,往観測の出発点に立てた標尺は,復観測の出発点には立てない。」
この文章は正しいです。
まず標尺を1本しか使用しない場合、その使用した標尺に異常があれば観測結果そのものが正しい成果とは言えなくなってしまいます。
また、前視と後視を観測するごとに毎回1本の標尺を据えていたら効率も悪いですしね。
そのため2本1組で標尺を使用することで標尺そのものが持つ誤差をなるべくカバーするのです。
その一方で2本1組で標尺を使用したとしても、零点誤差を防ぐための前提の決まりである
- 標尺の設置回数を奇数回にする
- レベルを据える回数を偶数にする
といったものを考慮する場合、往観測と復観測の最初に立てる標尺にも注意が必要です。
もしも往観測と複観測のそれぞれの出発点で同一の標尺を立てた場合、路線上の標尺を立てる全地点で同じ標尺を立てることとなるので、標尺そのものが持つ誤差が同じ地点に影響します。
そのため往観測と複観測のそれぞれの出発点で別々の標尺を立てることで、各地点で発生する誤差の要因を同一の標尺が持つ誤差にしないようにして、結果的に成果を安定させているのですね。
よって
- 標尺を2本1組とする
- 往観測の出発点に立てた標尺は、復観測の出発点に立てない
の2つは正しい決まりとなります。
解説に出てきた零点誤差については、令和3年のNO.10の解答記事で詳しく解説しています。
理解を深めたい方はそちらも参考にしてみてください。
参考記事→【過去問がひと記事で丸わかり】令和3年測量士補試験No.10の解答・解説
選択肢4について
「路線に見通しのきかない曲がり角があったため,両方の標尺が見える曲がり角にレベルを設置して観測した。」
この文章は間違いです。
国土地理院が定める作業規程の準則の64条の五(P32)に以下のような文章があります。
視準距離は等しく、かつ、レベルはできる限り両標尺を結ぶ直線上に設置するものとする。
しかしながら、選択肢の文章のように見通しのきかない曲がり角にレベルを設置すると、両標尺を結ぶ直線状に設置することができません。
つまり、作業規程の準則に定める作業内容に反することになってしまいます。
上図からもわかるように、曲がり角に対応するには
- 標尺を曲がり角に置く
- 路線を曲がり角がないものに設定する
などが考えられます。
ちなみになぜ曲がり角にレベルを設置してはいけないかですが、これには視準線誤差が関わってきます。
視準線誤差は標尺を結ぶ直線上にレベルを据えないと、誤差が大きくなってしまうのです。
視準線誤差については、令和3年のNO.10の解答記事で詳しく解説しています。
理解を深めたい方はそちらも参考にしてみてください。
参考記事→【過去問がひと記事で丸わかり】令和3年測量士補試験No.10の解答・解説
選択肢5について
「やむを得ず1日の観測が固定点で終わる場合,観測の再開時に固定点の異常の有無を点検できるようにする。」
この文章は正しいです。
国土地理院が定める作業規程の準則の64条の八(P33)に以下のような文章があります。
1日の観測は、水準点で終わることを原則とする。なお、やむを得ず固定点で終わる場合は、観測の再開時に固定点の異常の有無を点検できるような方法で行うものとする。
上記の文章は選択肢の内容と一致しているので、正しいですね。
水準測量は既に国土地理院が管理している水準点などの既知点~既知点までを路線として組むのですが、1日の作業時間によっては水準点で終えることができないこともあります。
1日の終わりに水準点ではない中途半端な個所で終了してしまった場合は、別日に改めて再開した際に中断した個所から続けて作業をできるように固定点を設置します。
ただ、この設置した固定点に異常がある(=間違っているなど)があると、再開した段階で既に結果に誤差が出てくることが決定してしまいます。
そのために観測を再開するときにその固定点に異常がないかを確認する必要があるのですね。
それではどのように異常がないかを確認するかですが、固定点を2つ作ることで対応できます。
固定点を2つ作るということは「本命の固定点を1つ」と「予備の固定点を1つ」作るということです。
2つの固定点を作り固定点同士の路線を組んで水準測量をおこなえば、それぞれの高さを比べることができるのでどちらにも異常がないことを確認できます。
上図の場合であれば、1日目の終わりに固定点Aと固定点Bを作成して作業を終了します。
2日目の朝に固定点Aと固定点Bの高さの差を水準測量で比べ、確からしい値が出れば異常の有無の点検が完了ということになります。
令和3年測量士補試験No.11のまとめ
「水準測量」からの出題でした。
水準測量には誤差を防ぐために様々なルールが施行されています。
水準測量の誤差を防ぐためにどのような対応をしているかを考えると、なぜ様々なルールで縛るかを理解することができるので、紐づけて覚えていくとイメージしやすいです。
暗記する部分も多くなるかもしれませんが、ただ暗記するだけではなくイメージを大切にしましょう!
令和3年測量士補試験No.11の類題
過去に出題された本問の類題です!ぜひチャレンジしてみてください!
令和2年測量士補試験問題集NO.10→問題文及び解説記事はコチラ
令和3年測量士補試験問題集NO.10→問題文及び解説記事はコチラ
令和4年測量士補試験問題集NO.10→問題文及び解説記事はコチラ
令和4年測量士補試験問題集NO.11→問題文及び解説記事はコチラ
その他の測量士補試験の問題に挑戦!
令和3年のNO.11の問題を確認したら、その他の問題にも挑戦していきましょう!
本ブログでは各問題の解説を年度ごとに一覧にまとめたページがありますので、ぜひその記事からその他の問題に挑戦してみてください!
問題解説のまとめ記事はコチラからどうぞ!→過去問に挑戦!現役測量士の解説を読んで測量士補試験を攻略しよう!
さいごに
本ブログを参考にしていただきありがとうございます。
内容に関して不明な点、ご質問、指摘事項、感想などございましたら、コメントやメールにてご連絡ください。
励みになるとともに、本ブログをよりたくさんの皆様に有益なものにできると考えています。
ぜひお待ちしております。
お問い合わせ先:surveyor_kenzo☆aol.com
※ご連絡の際は☆を@に変更してください。