測量士補試験攻略

【ひと記事で丸わかり】令和2年(2020年)測量士補試験No.10の解答・解説~水準測量の順守事項~

あさひ
この記事を書いているのは現役の測量士です。本記事では令和2年測量士補試験のNo.10の内容について詳しく解説していきます。

必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。

令和2年測量士補試験No.10の問題文

 次の文は,公共測量における水準測量を実施するときに遵守すべき事項について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。

  1. 1日の観測は,水準点で終わることを原則とする。なお,やむを得ず固定点で終わる場合は,観測の再開時に固定点の異常の有無を点検できるような方法で行うものとする。
  2. 1級水準測量では,観測は 1 視準 1 読定とし,後視→前視→前視→後視の順に標尺を読定する。
  3. 1級水準測量及び 2 級水準測量の再測は,同方向の観測値を採用しないものとする。
  4. 往復観測を行う水準測量において,水準点間の測点数が多い場合は,適宜,固定点を設け,往路及び復路の観測に共通して使用する。
  5. 2級水準測量では,1 級標尺又は 2 級標尺を使用する。

令和2年測量士補試験問題集 No.10)

令和2年測量士補試験No.10の解答・解説

水準測量」の分野からの出題です。

解答は「5」となります。以下、各選択肢の詳しい解説です。

文章1について

『1日の観測は,水準点で終わることを原則とする。なお,やむを得ず固定点で終わる場合は,観測の再開時に固定点の異常の有無を点検できるような方法で行うものとする。』

上記文章は正しいです。

国土地理院が定める作業規程の準則の第2編第3章第5節第64条の2の八に、以下の通り記載があります。

第64条(観測の実施)2の八
1日の観測は、水準点で終わることを原則とする。なお、やむを得ず固定点で終わる場合は、観測の再開時に固定点の異常の有無を点検できるような方法で行うものとする。

作業規程の準則 P33)

上記条文と問題の文章1の内容は一致しているため、文章1の内容は正しいと言えます。

水準測量では、一日の作業の区切りは水準点で終えることが最も望ましいですが、その日の進捗状況や環境で水準点で終えることができない可能性があります。

しかしながら水準点で終えることができないときは、代わりに固定点を設置してそこで終えることができます。

ちなみに、固定点というのは作業再開時に明らかに前回作業を終えた地点と同じ場所であると判断できる点のことで、杭や鋲(びょう)などを打って場所を固定しておきます。

設置した固定点は異常の有無を確認できるようにしておく必要がありますが、その対応は固定点を2つ設置することで対応することが多いです。

固定点を1つだけ設置した場合だと、もしもその固定点に異常があった場合に前回終了時の作業を再開することができなくなってしまいます。

一方で2つ設置した場合は、片方の固定点に異常があった場合にすぐに代用することができますし、それぞれの固定点に異常がないかを確認することも可能です。

以上のことから、その日の作業を終える場合は固定点で終える場合は、観測の再開時に固定点の異常の有無を点検できるような方法で終える必要があります。

作業規程の準則第2編第3章第5節第64条2の八_観測の実施

文章2について

『1級水準測量では,観測は 1 視準 1 読定とし,後視→前視→前視→後視の順に標尺を読定する。』

上記文章は正しいです。

国土地理院が定める作業規程の準則の第2編第3章第5節第64条の2の一のロに、以下の通り記載があります。

第64条(観測の実施)2の一のロ
観測は、1視準1読定とし、標尺の読定方法は、次表を標準とする。

作業規程の準則第2編第3章第5節第64条2の一のロの表

作業規程の準則 P32)

よって、上記文章と表から、

  • 水準測量の等級に関わらず観測は1視準1読定
  • 1級水準測量の観測順序は①後視→②前視→③前視→④後視

ということがわかります。

1級水準測量の観測順序

以上のことから、作業規程の準則の内容と文章2の内容は一致しますので、文章2は正しいと言えます。

水準測量には以下のように種類が合って一番上が最も精度が高いかつ作業が困難、下が最も精度が低くかつ作業が容易となります。

  • 1級水準測量
  • 2級水準測量
  • 3級水準測量
  • 4級水準測量
  • 簡易水準測量

今回は1級水準測量のことを聞かれていますので、最も精度が高く作業が困難な等級の水準測量となります。

1視準1読定は、測量機器をターゲットに1回向けて(視準して)、観測の値を1回読む(読定する)こと。

後視は「こうし」とよみ前視は「ぜんし」と読みます。

観測の進行方向に向かって前側の方向が前視、後ろ側の方向が後視となります。

前視と後視と1級水準測量の観測順序

文章3について

『1級水準測量及び 2 級水準測量の再測は,同方向の観測値を採用しないものとする。』

上記文章は正しいです。

国土地理院が定める作業規程の準則の第2編第3章第5節第65条の二に、以下の通り記載があります。

第65条(再測)二
1級水準測量及び2級水準測量の再測は、同方向の観測値を採用しないものとする。

作業規程の準則 P34)

上記条文と文章3の内容は一致していますので、文章3は正しいと言えます。

水準測量では進行方向に対して往路の観測と復路の観測を実施しますが、一方向(往路か復路)のみの観測では観測した値に系統的な誤差が発生してしまう恐れがあります。

系統的な誤差とは、往路観測と復路観測をおこなえば打ち消せることができたはずの誤差のことで、横着して往路観測をおこなったあとに符号を逆転して復路観測の結果としても採用するなどするとその誤差は残ってしまいます。

よって、同方向(往路×2もしくは復路×2)の観測値を採用することはしてはならず、必ず往路と復路、それぞれの観測値を採用して再測の結果を出す必要があります。

作業規程の準則第2編第3章第5節第65条_水準測量の再測

文章4について

『往復観測を行う水準測量において,水準点間の測点数が多い場合は,適宜,固定点を設け,往路及び復路の観測に共通して使用する。』

上記文章は正しいです。

国土地理院が定める作業規程の準則の第2編第3章第5節第64条の2の六に、以下の通り記載があります。

第64条(観測の実施)2の六
往復観測を行う水準測量において、水準点間の測点数が多い場合は、適宜固定点を設け、往路及び復路の観測に共通して使用するものとする。

作業規程の準則 P33)

上記条文と問題の文章4の内容は一致しているため、文章4の内容は正しいと言えます。

万が一、水準測量の成果に異常があった場合どこにその原因があったか突き止めていく必要があるのですが、その際に水準点間の測点数が多いと、原因の追究に時間がかかります。

一方で、水準点間に適宜固定点を設置して往路と復路の観測で共通して使用すると、水準測量の成果に異常があった場合に原因の追究をしやすくなるのです。

例えば、水準点間の観測で異常があった場合は改めて水準点間の再測を行う必要がありますが、間に固定点があれば水準点↔固定点、もしくは固定点↔固定点の区間のみの再測で済むということです。

作業規程の準則第2編第3章第5節第64条2の六_水準点間の固定点の設置

文章5について

『2級水準測量では,1 級標尺又は 2 級標尺を使用する。』

上記文章は間違いです。

国土地理院が定める作業規程の準則の第2編第3章第5節第62条に、以下の通り記載があります。

第62条(機器)
観測に使用する機器は、次表に掲げるもの又はこれらと同等以上のものを標準とする。

第64条_機器の表

作業規程の準則 P31)

上記表より

  • 1級標尺→1~4級水準測量に摘要
  • 2級標尺→3~4級水準測量に摘要

ということがわかります。

1級標尺と2級標尺の表

つまり、2級標尺は3~4級水準測量でしか使用することができず、1~2級水準測量では必ず1級標尺を使用しなければなりません。

よって作業規程の準則の条文と一致しませんので、文章5は間違いということになります。

1級標尺と2級標尺には性能の基準に明確な違いがあり、測量機器性能基準で規定されています。

2級標尺に比べて1級標尺はより高い精度の判定基準をクリアしたものであり、1~2級水準測量のように高い精度を求められる測量では必要な機器です。

この選択肢はひっかけでよく出やすいので、必ずおさえておきましょう!

文章1~5のまとめ

それぞれの文章の正誤をまとめると次の通りになります。

本問では明らかに間違っている文章の番号を選ぶように指示を受けているので「選択肢5」を選ぶのが正解となります。

令和2年測量士補試験No.10のまとめ

「水準測量」からの出題でした。

水準測量に関する作業の決まりごとは毎年のように出題があるとても重要な問題です。

類題も含み様々なパターンの過去の問題を解いて、必ず対応出来るようにしましょう!

令和2年測量士補試験No.10類題

過去に出題された本問の類題です!ぜひチャレンジしてみてください!

令和3年測量士補試験問題集NO.10→問題文及び解説記事はコチラ

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