必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和2年測量士補試験No.20の問題文
次の a ~ d の文は,公共測量における航空レーザ測量について述べたものである。ア ~ エ に入る語句の組合せとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。
- 航空レーザ測量では,(ア)及び点検のための航空レーザ用数値写真を同時期に撮影する。
- 航空レーザ測量システムは,レーザ測距装置,(イ),解析ソフトウェアなどにより構成されている。
- グラウンドデータとは,取得したレーザ測距データから,(ウ)以外のデータを取り除く(ア)処理を行い作成した,(ウ)の三次元座標データである。
- 三次元計測データの点検及び補正を行うために(エ)を設置する必要がある。
- (ア)リサンプリング(イ)GNSS/IMU装置(ウ)水面(エ)簡易水準点
- (ア)フィルタリング(イ)オドメーター(ウ)水面(エ)調整用基準点
- (ア)リサンプリング(イ)オドメーター(ウ)地表面(エ)簡易水準点
- (ア)フィルタリング(イ)GNSS/IMU装置(ウ)地表面(エ)簡易水準点
- (ア)フィルタリング(イ)GNSS/IMU装置(ウ)地表面(エ)調整用基準点
(令和2年測量士補試験問題集 No.20)
令和2年測量士補試験No.20の解答・解説
「写真測量」の分野からの出題です。
解答は「5」となります。以下、各文章の詳しい解説です。
文章aについて
『航空レーザ測量では,(ア)及び点検のための航空レーザ用数値写真を同時期に撮影する。』
(ア)には「リサンプリング」と「フィルタリング」のうち「フィルタリング」が入ります。
国土地理院が定めた作業規程の準則の第2編 第10章 第4節 第425条には次のように記載があります。
第425条(航空レーザ用数値写真)
航空レーザ用数値写真は、空中から地表を撮影した画像データで、フィルタリング及び点検のために撮影するものとする。
(作業規程の準則 P118)
よって、正しい文章は
『航空レーザ測量では,(フィルタリング)及び点検のための航空レーザ用数値写真を同時期に撮影する。』
となり、(ア)には「フィルタリング」を入れることが正しいことが分かります。
また、「リサンプリング」と「フィルタリング」それぞれの用語についての詳しい内容は次の通りです。
リサンプリングとは
リサンプリングは、画素を再配列することで、主に空中写真測量やオルソ画像作成の際に使用される言葉です。
空中写真測量やオルソ画像作成の際には複数の写真を使用して1枚の画像を作成しますが、その作成の際にそれぞれの画像を補正するためにゆがみが生じてしまいます。
このゆがみは、画素がキレイな形状に配列されないためにおこるものなのですが、その画素の配列を綺麗にする処理を「リサンプリング」と言います。
フィルタリングとは
フィルタリングは、レーザー計測などで取得した点群データを様々な属性にわける処理のことを言います。
通常、作成した点群データの初期状態はすべて1つの属性でまとまっており、点群データ内で属性に違いがありません。
点群データ内には取得したいデータの他にノイズ処理と呼ばれる邪魔なデータが含まれており、この邪魔なデータをより分ける必要があります。
また、目的によっては「地面」「建物」「植生」などを明確に分ける必要も出てきます。
点群データに「地面」「建物」「植生」「ノイズ」のような属性を与えることでデータ内の点群データに違いを出す作業をフィルタリングと呼びます。
最近は点群処理ソフトである程度半自動的にデータをより分けることが可能になってきていますがまだ人の手が必要であり、この人の手の作業の際の必要な資料として写真を使用します。
航空レーザー測量の場合はフィルタリング作業のために、計測時に写真も同時に取得するようにしています。
文章bについて
『航空レーザ測量システムは,レーザ測距装置,(イ),解析ソフトウェアなどにより構成されている。』
(イ)には「GNSS/IMU装置」と「オドメーター」のうち「GNSS/IMU装置」が入ります。
国土地理院が定めた作業規程の準則の第2編 第10章 第4節 第423条には次のように記載があります。
第423条(航空レーザ測量システム)
航空レーザ測量システムは、GNSS/IMU装置、レーザ測距装置及び解析ソフトウェアから構成するものとする。
(作業規程の準則 P117)
よって、正しい文章は
『航空レーザ測量システムは,レーザ測距装置,(GNSS/IMU装置),解析ソフトウェアなどにより構成されている。』
となり、(イ)には「GNSS/IMU装置」を入れることが正しいことが分かります。
また、「GNSS/IMU装置」と「オドメーター」のそれぞれの用語の詳しい説明は次の通りです。
GNSS/IMU装置
GNSS/IMU装置は、搭載した機体の位置や姿勢を決めるために使用する装置です。
GNSS(Global Navigation Satellite System)とIMU(Inertial Measurement Unit)を組み合わせており、GNSSが機体の位置を、IMUが機体の姿勢を割り出す役割があります。
航空機や車両に搭載されており、どの位置を計測していて、どのぐらい機体・車両が曲がったか、回転したかを計測することで、取得したレーザーデータの位置を補正することができます。
オドメーター
オドメーターは走行距離計のことで、車両などがどのぐらいの距離を測ったかを求めるための装置です。
MMS(レーザースキャナを車両に搭載したもの)に主に取り付けられていて、位置の補正などに利用されています。
文章cについて
『グラウンドデータとは,取得したレーザ測距データから,(ウ)以外のデータを取り除く(ア)処理を行い作成した,(ウ)の三次元座標データである。』
(ウ)には「水面」と「地表面」のうち「地表面」が入ります。
国土地理院が定めた作業規程の準則の第2編 第10章 第8節 第439条には次のように記載があります。
第439条(グラウンドデータの作成)
「グラウンドデータの作成」とは、オリジナルデータからフィルタリング処理により地表面の三次元座標データを作成する作業をいう。
(作業規程の準則 P122)
よって、正しい文章は
『グラウンドデータとは,取得したレーザ測距データから,(地表面)以外のデータを取り除く(フィルタリング)処理を行い作成した,(地表面)の三次元座標データである。』
となり、(ウ)には「地表面」を入れることが正しいと言えます。
また、グラウンドデータの詳しい説明は次の通りです。
グラウンドデータとは
グラウンドデータは、地面のみのデータのことを指します。グラウンド(ground)が日本語では「地面」をさしますので、想像しやすいですね。
通常、レーザー測量による計測データには「地面」「建物」「植生」「その他ノイズなど」が含まれていますが、このうち「建物」「植生」「その他ノイズなど」をフィルタリング処理してグラウンドデータ(地面のみのデータ)を作成します。
また、この地面のみのデータにより地形の形状が分かるようになり、数値標高モデル:DEM(Digital Elevation Mdel)とも呼びます。
文章dについて
『三次元計測データの点検及び補正を行うために(エ)を設置する必要がある。』
(エ)には「簡易水準点」と「調整用基準点」のうち「調整用基準点」が入ります。
国土地理院が定めた作業規程の準則の第2編 第10章 第5節 第427条には次のように記載があります。
第427条 (調整用基準点の設置)
「調整用基準点の設置」とは、三次元計測データの点検及び調整を行うための基準点(以下「調整用基準点」という。)を設置する作業をいう。(作業規程の準則 P119)
よって、正しい文章は
『三次元計測データの点検及び補正を行うために(調整用基準点)を設置する必要がある。』
となり、(エ)には「調整用基準点」を入れることが正しいと言えます。
また、「簡易水準点」と「調整用基準点」のそれぞれの詳しい説明は次の通りです。
簡易水準点
簡易水準測量により設置された水準点を簡易水準点と言います。
あくまで標高の指標として使用されるもので、三次元点群データの点検や補正には使用しません。
調整用基準点
調整用基準点は三次元点群データの点検や補正を目的として設置する点です。
基準点からトータルステーションで設置する方法とGNSS観測で設置する方法があります。
調整用基準点の設置には周辺が平らで階段や段差のない平坦な土地で、かつ上空が開けていることが必要です。
万が一取得した三次元点群データと調整用基準手の高さに一定の数値以上の差がある場合は、三次元点群データの高さを調整する必要があります。
(ア)~(エ)に入る語句のまとめ
今までの解説から、文章a~dの(ア)~(オ)にはそれぞれ次の語句が入ることが分かりました。
(ア):フィルタリング
(イ):GNSS/IMU装置
(ウ):地表面
(エ):調整用基準点
よってこの語句と対応する選択肢は「5」となるので、本問の正解は「5」となります。
令和2年測量士補試験No.20のまとめ
「写真測量」からの出題でした。
写真測量というよりは航空レーザー測量に関する問題ですが、近年ではニーズが高い計測方法の1つです。
レーザーということで写真に比べてイメージがしづらいかもしれませんが、作業規程の準則でもある程度定められているので、丸暗記しても大丈夫かと思います。
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