必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和3年測量士補試験No.24の問題文
次のa〜eの文は,GIS で扱うデータ形式や GIS の機能について述べたものである。明らかに間違っているものだけの組合せはどれか。次の中から選べ。
- GIS でよく利用されるデータにはベクタデータとラスタデータがあり,ベクタデータのファイル形式としては,GML,KML,TIFF などがある。
- 居住地区の明治期の地図に位置情報を付与できれば,GIS を用いてその位置精度に応じた縮尺の現在の地図と重ね合わせて表示できる。
- 国土地理院の基盤地図情報ダウンロードページから入手した水涯線データに対して,GIS を用いて標高別に色分けすることにより,浸水が想定される範囲の確認が可能な地図を作成できる。
- 数値標高モデル(DEM)から,斜度が一定の角度以上となる範囲を抽出し,その範囲を任意の色で着色することにより,雪崩危険箇所を表示することができる。
- 地震発生前と地震発生後の数値表層モデル(DSM)を比較することによって,倒壊建物がどの程度発生したのかを推定し,被災状況を概観する地図を作成することが可能である。
- a,b
- a,c
- b,d
- c,e
- d,e
(令和3年測量士補試験問題集 No24)
令和3年測量士補試験No.24の解答・解説
「地図編集」の分野からの出題です。
各選択肢の正誤は以下の通りです。
- 誤
- 正
- 誤
- 正
- 正
正解は「2」となります。
以下、各選択肢の詳しい解説です。
選択肢aについて
『GIS でよく利用されるデータにはベクタデータとラスタデータがあり,ベクタデータのファイル形式としては,GML,KML,TIFF などがある。』
この文章は間違いです。
GISでは主に「ベクタデータ」と「ラスタデータ」を用いて解析や表現をおこなっていきます。
それぞれのデータの代表的なファイル形式は次の通りです。
- ベクタデータ→GML,KML,SHPなど
- ラスタデータ→GeoTIFF,ワールドファイル(位置情報)付のJPEG,PNGなど
選択肢の文章ではベクタデータのファイル形式としてGML,KML,TIFFを定義していますが、TIFFはラスタデータなので矛盾しています。
よって選択肢aの文章は誤りということになります。
ちなみにベクタデータ内には大きく分けて以下の3つの形状のデータが入っています。
- 点(point)
- 線(line)
- 面(polygon)
それに対して、ラスタデータは主に位置情報付の画像が用いられます。
厳密に言えばさらに細かい定義が必要になりますが、業務で扱わないのであればそこまでの知識はいりません。
測量士補受験レベルであれば、ベクタデータの線や面はパワーポイントの挿入で入力できる「線」や「四角形・楕円などの図形」,ラスタデータは画像とイメージしておけば問題ないです。
選択肢bについて
『居住地区の明治期の地図に位置情報を付与できれば,GIS を用いてその位置精度に応じた縮尺の現在の地図と重ね合わせて表示できる。』
この文章は正しいです。
位置情報さえあっていれば、様々なデータを重ねて表示したり解析することができるのがGISの特徴の1つです。
選択肢の文章のように明治期と現在の地図で同じ位置情報を持っていれば重ねて表示することも可能です。
同じ位置の地図を重ねて表示することで
- 同一地区の時期の違いによる土地活用のされ方の変化
- 災害前と災害後の比較
など様々な目的に応じてGISを活用することができます。
よって選択肢の文章の内容と一致するので、選択肢bは正しいです。
選択肢cについて
『国土地理院の基盤地図情報ダウンロードページから入手した水涯線データに対して,GIS を用いて標高別に色分けすることにより,浸水が想定される範囲の確認が可能な地図を作成できる。』
この文章は間違いです。
国土地理院の基盤地図情報の水涯線に関するページでは以下のように定義されています。
河川、湖沼及びこれに接続する公共溝渠、かんがい用水路その他公共の用に供される水路(下水道法(昭和33年法律第79号)第2条第3号及び第4号に規定する公共下水道及び流域下水道であって、同条第6号に規定する終末処理場を設置しているもの(その流域下水道に接続する公共下水道を含む。)を除く。)の平水時における陸地と水面との境界線
(基盤地図情報 水涯線より)
つまり、水涯線はあくまで陸地と水面との境界線のことです。
そこだけの標高が分かってもその周囲の地形の標高がわかるわけではないので浸水を想定することはできません。
水「害」線ではないので注意しましょう。
よって選択肢の文章の内容と矛盾するので、選択肢cは誤りということになります。
選択肢dについて
『数値標高モデル(DEM)から,斜度が一定の角度以上となる範囲を抽出し,その範囲を任意の色で着色することにより,雪崩危険箇所を表示することができる。』
この文章は正しいです。
そもそも数値標高モデル(DEM)とは任意の地点ごとの標高を表現しているデータです。
GoogleMapでレイヤを地形に変更するとまさしく選択肢dの文章のような表現をしています。
DEMを利用して斜度が大きい部分を影がついているように着色することで、地形のリアルな感じを出しているんですね。
同様のことをGISでも行えるので、斜度が一定の角度よりも大きい部分を赤色などで示すことで雪崩危険個所を表示したデータを作成することができます。
よって選択肢dの文章と内容が一致強いていますので選択肢dは正しいということになります。
選択肢eについて
『地震発生前と地震発生後の数値表層モデル(DSM)を比較することによって,倒壊建物がどの程度発生したのかを推定し,被災状況を概観する地図を作成することが可能である。』
この文章は正しいです。
数値表層モデル(DSM)は地表面のうち一番高い個所をまとめたモデルです。
DEMとよく混同されますが、DEMは地盤面のみ、DSMは建物や樹木の頭頂部を含みます。
このDSMの性質を応用すると、建物の倒壊する前と後で倒壊した建物のある個所のDSMが変化するため、被害状況を推定しそれを表現した地図を作成することが可能です。
よって選択肢cの文章と内容が一致するので、選択肢eは正しいと言えます。
令和3年測量士補試験No.24のまとめ
地図編集の分野からの出題でした。
今回はGISということで専門的なシステムの話です。
そもそもGISがどんなものか理解していないと解説を読んでもイメージしづらいかもしれないので。余裕があればフリーソフトのGISを実際に触ってみたり、youtubeでインターフェースを見るなどして少しでも触れておきましょう!
令和3年測量士補試験No.24の類題
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令和2年測量士補試験問題集NO.24→問題文及び解説記事はコチラ
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