測量士補試験攻略

【ひと記事で丸わかり】令和3年(2021年)測量士補試験No.17の解答・解説~空中写真測量の特徴~

あさひ
この記事を書いているのは現役の測量士です。本記事では令和3年測量士補試験のNo.17の内容について詳しく解説していきます。

必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。

令和3年測量士補試験No.17の問題文

次の文は,空中写真測量の特徴について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。

  1. 撮影高度及び画面距離が一定ならば,航空カメラの撮像面での素子寸法が大きいほど,撮影する空中写真の地上画素寸法は小さくなる。
  2. 高塔や高層建物は,空中写真の鉛直点を中心として外側へ倒れこむように写る。
  3. 他の撮影条件が一定ならば,山頂部における地上画素寸法は,その山の山麓部におけるそれより小さくなる。
  4. 空中写真に写る地物の形状,大きさ,色調,模様などから,土地利用の状況を知ることができる。
  5. 自然災害時に空中写真を撮影することで,迅速に広範囲の被災状況を把握することができる。

令和3年測量士補試験問題集 No17より)

令和3年測量士補試験No.17の解答・解説

写真測量」の分野からの出題です。

各選択肢の正誤は

となっており、本問は明らかに間違っているものを選ぶ問題ですので解答は「1」となります。

以下、各選択肢の詳しい解説です。

選択肢1について

撮影高度及び画面距離が一定ならば,航空カメラの撮像面での素子寸法が大きいほど,撮影する空中写真の地上画素寸法は小さくなる。

この選択肢の内容は「間違い」です。

まずは、空中写真測量に関するそれぞれの用語が何を表すか、図で確認してみましょう。

空中写真測量の図

上の図は、写真を搭載した航空機で地面を撮影している場面を横から見たイメージにまとめたものです。

まず、撮像面はカメラで撮影した映像が映し出される面ですね。

その撮像面の素子寸法ということは、撮影した映像が1つの写真になったときの画像の1マス1マスの大きさを表します。

素子寸法が小さくなるほど画像に入れることができるマスの数が増えるので、細かい表現ができるようになり画像がキレイになります。

それに対して地上画素寸法は、カメラで撮影した映像の1マスの大きさが実際に現実の大きさになったらどのぐらいの大きさになるかを表しています。

地上画素寸法が小さい画像ほど、地上の表現を細かい間隔でできているのでよりキレイな画像になりますね。

また、撮像面の素子寸法と地上画素寸法は比例の関にあり、撮像面の素子寸法が大きくなれば地上画素寸法も大きくなります。

続いて、画面距離はカメラのレンズ部分から撮像面までの距離を指します。

それに対して撮影高度はレンズ部分から撮影対象(地盤面や建物など)までの距離を指していますね。

本選択肢の文章では「撮影高度及び画面距離が一定」のときの撮像面の素子寸法と地上画素寸法の大きさの関係を問われていますので、実際に図にして考えてみましょう。

素子寸法と地上画素寸法「画面距離と撮影高度が一定である」という条件の場合は、撮像面の素子寸法が大きくなるにしたがって地上画素寸法も大きくなることが分かりますね。

よって

撮影高度及び画面距離が一定ならば,航空カメラの撮像面での素子寸法が大きいほど,撮影する空中写真の地上画素寸法は小さくなる。

という選択肢の内容は矛盾するため、「間違い」となります。

選択肢2について

『高塔や高層建物は,空中写真の鉛直点を中心として外側へ倒れこむように写る。』

この選択肢は「正しい」です。

まず空中写真の鉛直点とは下図のように、地盤面から垂直に上がった線がレンズ中心を通り撮像面に当たった点を指します。

鉛直点のイメージまた、上図の状態で写真を撮影すると鉛直点は下図の位置あたりにきます(かなりおおまかですが…)。

加えて、空中写真は鉛直点を中心に視点が外側に向いていく特性があります。

鉛直点のイメージ2

つまり、鉛直点上にある建物は真上から映り込みますが、その鉛直点の周囲にある建物は外側に倒れこむように映り込むのです。

鉛直点のイメージ3

よって

『高塔や高層建物は,空中写真の鉛直点を中心として外側へ倒れこむように写る。』

という選択肢の内容は「正しい」ということとなります。

選択肢3について

『他の撮影条件が一定ならば,山頂部における地上画素寸法は,その山の山麓部におけるそれより小さくなる。』

この選択肢は「正しい」です。

まず、山頂部と山麓(さんろく)部ですがそれぞれ下図の通りですね。

山頂部と山麓部

山頂部は山の一番高い部分、山麓部は平地から山地に変わる部分のことです。

選択肢の文章では「他の撮影条件が一定の場合の山頂部と山麓部の地上画素寸法の大きさ」について述べていますので、実際に比べてみると分かりやすいです。

撮影条件が一定ですので

  • 撮像面の素子寸法
  • 画面距離
  • 撮影高度

の3つを一定にしたときの地上画素寸法の違いを見てみましょう。

素子寸法と地上画素寸法2

左側の山麓部の写真に写る部分と右側の山頂部の写真に写る部分を比べると山頂部の方が写っている部分が少なく、地上画素寸法(黄色い矢印)が小さくなることが分かります。

イメージがわかない人は、懐中電灯を壁に当てたときの光の大きさをイメージしてみると良いです。

懐中電灯に近いものに光を当てたときの方が、遠くに当てたときよりも光の大きさが小さくなりますよね?

よって

『他の撮影条件が一定ならば,山頂部における地上画素寸法は,その山の山麓部におけるそれより小さくなる。』

この選択肢が「正しい」ことがわかります。

選択肢4について

『空中写真に写る地物の形状,大きさ,色調,模様などから,土地利用の状況を知ることができる。』

この選択肢は「正しい」です。

空中写真に写る地上の

  • 形状
  • 大きさ
  • 色調
  • 模様

などの情報を利用して

  • 土地利用
  • 樹種
  • 災害状況

などを判断する「写真判読」という技術があります。

写真判読まではいきませんがGoogleMapやYahoo!地図などで提供される航空写真を確認することで、一般の方でもその土地が住宅地・商業地・山などの判断をすることは可能ですので、技術としてはイメージしやすいと思います。

上記の理由から

『空中写真に写る地物の形状,大きさ,色調,模様などから,土地利用の状況を知ることができる。』

この選択肢は「正しい」ということとなります。

選択肢5について

『自然災害時に空中写真を撮影することで,迅速に広範囲の被災状況を把握することができる。』

この選択肢は「正しい」です。

選択肢4の文章でも記載していますが、空中写真から地上の状況を把握することが可能です。

このことを利用して災害時には航空機を所有する会社が迅速に被災状況を確認するために、航空機を発進させることは多々あります。

例えば2022年5月7日時点では、航空測量大手のアジア航測(株)が「2022年3月16日23時36分頃に起きた福島県沖の地震の被害状況」について、翌日3月17日に空中写真撮影を実施し、その災害状況の写真をHP上で提供しています。

参考にリンクを掲載しますので、参考に確認してみてください。→福島県沖で発生した震度6強の地震による被害状況(2022年3月17日撮影)(アジア航測(株)HP)

上記の理由から

『自然災害時に空中写真を撮影することで,迅速に広範囲の被災状況を把握することができる。』

この選択肢は「正しい」ということとなります。

令和3年測量士補試験No.17のまとめ

「写真測量」からの出題でした。

今回は空中写真に関する文章の正誤についての問題でした。

こういった問題は頻出ですので、なるべく多くの過去問を解いて様々な文章に対応できるようにしておきましょう!

その他の測量士補試験の問題に挑戦!

令和3年のNO.17の問題を確認したら、その他の問題にも挑戦していきましょう!

本ブログでは各問題の解説を年度ごとに一覧にまとめたページがありますので、ぜひその記事からその他の問題に挑戦してみてください!

問題解説のまとめ記事はコチラからどうぞ!→過去問に挑戦!現役測量士の解説を読んで測量士補試験を攻略しよう!

さいごに

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