測量士補試験攻略

【ひと記事で丸わかり】令和2年(2020年)測量士補試験No.12の解答・解説~水準測量の誤差~

あさひ
この記事を書いているのは現役の測量士です。本記事では令和2年測量士補試験のNo.12の内容について詳しく解説していきます。

必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。

令和2年測量士補試験No.12の問題文

 次の a ~ e の文は,水準測量における誤差について述べたものである。明らかに間違っているものだけの組合せはどれか。次の中から選べ。

  1. レベルと標尺の間隔が等距離となるように整置して観測することで,視準線誤差を消去できる。
  2. 標尺を 2 本 1 組とし,測点数を偶数にすることで,標尺の零点誤差を消去できる。
  3. 傾斜地において,標尺の最下部付近の視準を避けて観測すると,大気による屈折誤差を小さくできる。
  4. レベルと標尺との距離を短くし,レベルと標尺の間隔が等距離となるように整置して観測することで,両差を小さくできる。
  5. レベルの望遠鏡を常に特定の標尺に対向させてレベルを整置し観測することで,鉛直軸誤差を小さくできる。
  1. a,e
  2. bのみ
  3. c,d
  4. eのみ
  5. 間違っているものはない

令和2年測量士補試験問題集 No.12)

令和2年測量士補試験No.12の解答・解説

水準測量」の分野からの出題です。

解答は「5」となります。以下、各文章の詳しい解説です。

文章aについて

『レベルと標尺の間隔が等距離となるように整置して観測することで,視準線誤差を消去できる。』

上記文章は正しいです。

レベルと標尺の間隔が等距離になるように整地して観測することをセンターレベリングと言います。

センターレベリング

また、視準線誤差は目標物をレベルで覗いたときにレンズから目標物までを結んだ線(視準線)が気泡管軸と平行じゃないためにおこる誤差のことです。

視準線誤差の大きさは距離に比例しますので、レベルから標尺までの距離が前視側と後視側で同じであれば前視側の観測と後視側の観測で発生する誤差の大きさは同じということになります。

誤差の大きさが同じであれば前視側と後視側の観測値の差で打ち消すことができるので、視準線誤差はセンターレベリングで消去できます。

視準線誤差とセンターレベリング

よって、上記文章は正しいということになります。

文章bについて

『標尺を 2 本 1 組とし,測点数を偶数にすることで,標尺の零点誤差を消去できる。』

上記文章は正しいです。

零点誤差は、標尺を長期間使い続けたことで標尺の底が削れてしまい、標尺の底の目盛が零ではなくなってしまうために発生する誤差です。

零点誤差

標尺を2本1組で使用して、測点数(機械の設置回数)を偶数にすることで消去することが可能です。

零点誤差と設置回数

よって、文章bは正しいということになります。

文章cについて

『傾斜地において,標尺の最下部付近の視準を避けて観測すると,大気による屈折誤差を小さくできる。』

上記文章は正しいです。

大気による屈折誤差は、大気の密度の違いによって光が屈折するために起こる誤差です。

大気の密度は地表面付近に近づくほど濃くなるため、誤差に対する影響も大きくなります。

大気による屈折誤差とレベルの高さ

平地であれば、観測点の高低差がそこまで大きくないため発生する誤差の量が同じぐらいになることから特に気にする必要はないのですが、傾斜地ではその影響を考えなければなりません。

その理由は、傾斜地の場合はどうしても前視側と後視側の観測点に高低差がでてしまい誤差の量がそれぞれの観測点で変わってしまうことと、誤差が大きい地表面付近を視準する可能性が高くなるからです。

大気による屈折誤差と視準線の観測

そのため、少しでも大気による屈折誤差を小さくするためには標尺の最下部付近(=地表面付近)を避けて観測することが必要となります。

よって文章cは正しいと言えます。

文章dについて

『レベルと標尺との距離を短くし,レベルと標尺の間隔が等距離となるように整置して観測することで,両差を小さくできる。』

上記文章は正しいです。

両差は「球差」と「気差」を合わせた誤差のことで、それぞれ

  • 球差:地球が丸いことで発生することで起こる誤差
  • 気差:空気の寒暖差によって発生する誤差

となります。

両差について

両差は視準する距離に応じて誤差の量が変わり、レベルと標尺の距離が長くなればなるほどその影響は大きくなります。

また、球差に関しては距離に応じて誤差量がほぼ一定数増えていきます。

そのため

  • レベルと標尺との距離を短くする(気差に対する対応)
  • レベルと標尺の間隔が等距離となるように整置する(球差に対する対応)

といった対応は両差に対して有効な手段となります。

両差(気差球差)への対策

以上のことから、文章dは正しいと言えます。

文章eについて

『レベルの望遠鏡を常に特定の標尺に対向させてレベルを整置し観測することで,鉛直軸誤差を小さくできる。』

上記文章は正しいです。

鉛直軸誤差は、鉛直軸(レベルの縦の軸)が地面との鉛直線と合っていないために起こる誤差です。

鉛直軸誤差

特定の三脚が特定の標尺と必ず向き合うように観測することで、誤差の影響を少なくすることができます。(完全には消去できません。)

これは、鉛直軸の傾きの向きを観測ごとに一定の向きに決めることで、誤差のバラツキを抑えることができるからです、

鉛直軸誤差の対策

文章eでは「レベルの望遠鏡を常に特定の標尺に対向させて」と書いているので少し違うような気がするのですが、正式な正答が「5」の「間違っているものはない」であることから、上記のように三脚を同一の向き=望遠鏡が同じ向きと解釈します。

よって文章eは正しいです。

文章a~eの正誤まとめ

文章a~eの正誤をまとめると、次のようになります。

  1. 正しい
  2. 正しい
  3. 正しい
  4. 正しい
  5. 正しい

よって、すべて正しかったので明らかに間違っているものはありませんでした。

以上のことから対応する選択肢の番号は『5』となりますので、選択肢5が正解となります。

令和2年測量士補試験No.12のまとめ

「水準測量」からの出題でした。

水準測量に関する作業の決まりごとは毎年のように出題があるとても重要な問題です。

類題も含み様々なパターンの過去の問題を解いて、必ず対応出来るようにしましょう!

とにかく覚えることは多い部類ですが、誤差の発生原因と対策の原理がきちんと理解できればすぐに覚えられます。

原理が理解できない場合でも、ルールは決まっているので、丸暗記でも対策可能です。

なんにせよ頻出であることはまちがいありません。

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