必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和2年測量士補試験No.23の問題文
次の文は,一般的な地図編集の原則について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。
- 地図編集においては,編集の基となる地図の縮尺は,新たに作成する地図の縮尺より小さいものを採用する。
- 取捨選択に当たっては,表示対象物は縮尺に応じて適切に取捨選択し,かつ正確に表示する。また,重要度の高い対象物を省略することのないようにする。
- 総描に当たっては,現地の形状と相似性を保ち,形状の特徴を失わないようにする。必要に応じて形状を多少修飾して現状を理解しやすく総描する。
- 公共測量において,地図情報レベル2500の数値地形図に表示する地物の水平位置の転位は,原則として行わない。
- 注記とは,文字又は数値による表示をいい,地域,人工物,自然物等の固有の名称,特定の記号のないものの名称及び種類,標高,等高線数値などに用いる
(令和2年測量士補試験問題集 No.23)
令和2年測量士補試験No.23の解答・解説
「地図編集」の分野からの出題です。
正解は「1」となります。
以下、各文章の詳しい解説です。
文章1について
『地図編集においては,編集の基となる地図の縮尺は,新たに作成する地図の縮尺より小さいものを採用する。』
上記文章は間違いです。
国土地理院が定める作業規程の準則の第3編 第11章 第1節 第454条に、以下の通り記載があります。
(基図データ)
第454条 「基図データ」とは、編集原図データの骨格的表現事項を含む既成の数値地形図データをいう。
2 基図データは、次の各号を満たさなければならない。
一 内容が新しく、かつ、必要な精度を有するもの。
二 編集原図データの地図情報レベルと同等又はそれより小さい地図情報レベルのもの。(作業規程の準則 P73)
上記条文の地図情報レベルとは地図をどのぐらい細かく表現するかのレベルのことです。
地図情報レベル500であれば縮尺1/500の精度および表現がなされているレベルを指し、地図情報レベル1000であれば縮尺1/1000の精度および表現がなされているレベルを指します。
また、「基図データ」とは編集の基になる地図のデータのことです。
条文では、「編集原図データの地図情報レベルと同等又はそれより小さい地図情報レベルのもの」を基図データとして採用しなければならないと書いていますので、地図情報レベル500の図面を書く場合は、その基図データは500より小さい地図情報レベル250などのデータを使用しなければなりません。
続いて、縮尺が大きい・小さいの概念について簡単におさらいします。
1/500の縮尺の地図があった場合、それよりも大きい縮尺の地図は1/250、1/100などを指します。
一方で1/500の縮尺の地図よりも小さい縮尺の地図は1/1000や1/2500のものをいいます。
基図データは、新たに作成する地図情報レベルよりも小さいレベルのものを使用する必要がありますから、縮尺の概念で言えば大きい縮尺のものを使用することがあるということです。少しややこしいですね。
例えば、新しく編集する地図が1/500の縮尺であれば、それよりも大きい縮尺の1/250の基図が必要。
例えを言い換えれば、地図情報レベル500の地図を新しく作成する場合は、それよりも小さいレベルの地図情報レベル250の基図が必要になります。
よって、
『地図編集においては,編集の基となる地図の縮尺は,新たに作成する地図の縮尺より小さいものを採用する。』
としている文章は間違いであって
『地図編集においては,編集の基となる地図の縮尺は,新たに作成する地図の縮尺より大きいものを採用する。』
が正しい文章です。
以上のことから文章1は間違いであると言えます。
文章2について
『取捨選択に当たっては,表示対象物は縮尺に応じて適切に取捨選択し,かつ正確に表示する。また,重要度の高い対象物を省略することのないようにする。』
上記文章は正しいです。
地図を作成する際は、なるべく正しく詳細に地形や周辺情報を表現するのがよいですが、全てを表現することは物理的に難しいです。
そのため、限られた範囲で表現するために、何を表現して何を表現しないか…いわゆる取捨選択をおこなう必要があります。
例えば、A3の紙いっぱいに自分の周りの地図を描くとき、実際の大きさ(1/1の縮尺)と0.2倍の大きさ(1/5の縮尺)で描く場合では、実際の大きさで描く方がよりたくさんのモノを細かく表現することができますよね。
しかし、0.2倍の大きさで地図を描く場合はすべて表現しようとするとごちゃごちゃしてしまうので、一部のモノを省略しなければなりません。これが取捨選択です。
この取捨選択の際には適当に描くモノを選べばいいわけではなく、
- 地図を描く目的によってその地図に重要なモノは必ず残す
- 地図を見たときに分かりやすいように目印になるものは残す
- 作業規程の準則で定められた優先順位で、モノを残していく
など様々なことに注意しなければなりません。
よって、文章2の内容は正しいと言えます。
文章3について
『総描に当たっては,現地の形状と相似性を保ち,形状の特徴を失わないようにする。必要に応じて形状を多少修飾して現状を理解しやすく総描する。』
上記文章は正しいです。
総描とは、
- 複数の建物を1つの形状にまとめて表現する
- 複雑な形状の建物を簡単な形に省略して表現する(修飾する)
といったことを言います。
これは、建物をすべて表現した結果、地図が見にくくなってしまうことを防ぐためです。
よって文章3は正しいと言えます。
文章4について
『公共測量において,地図情報レベル2500の数値地形図に表示する地物の水平位置の転位は,原則として行わない。』
上記文章は正しいです。
まず転位とは、見やすさなどを考慮した結果、本来あるべきはずの位置から地物をズラすことを言います。
また、国土地理院が定める公共測量標準図式の第1章 第1節 第5条には、次の通り記載があります。
第5条(表示事項の転位)
数値地形図に表示する地物の水平位置の転位は、原則として行わない。
2 地図情報レベル 2500 以上に表示する地物の水平位置は、やむを得ない場合には地図情報レベルに対応する相当縮尺の出力図に限り、図上 0.7mm まで転位させることができる。(公共測量標準図式 P3)
上記文章から、原則として地物の水平位置の転位は行わないものとしています。
例外として地図情報レベル2500以上の地図であれば転位することは可能となっていますが、地図情報レベルと同等の縮尺で印刷したときに、0.7mmまでの範囲内でのみです。
転位についての理解が浅い方は一度、令和4年のNO23の問題を解いてみると理解しやすいと思います。本ブログでも解説していますので、ぜひ確認してください。→令和4年測量士補試験問題集NO.23の解説
よって、文章4は正しいということになります。
文章5について
『注記とは,文字又は数値による表示をいい,地域,人工物,自然物等の固有の名称,特定の記号のないものの名称及び種類,標高,等高線数値などに用いる。』
上記文章は正しいです。
国土地理院が定める公共測量標準図式の第4章 第1節 第52条には、次の通り記載があります。
第52条(注記)
注記とは、文字または数値による表示をいい、地域、人工物、自然物等の固有の名称(以下「固有名」という。)、特定の記号のないものの名称及び種類又は状態を示す説明並びに標高、等高線数値等に用いる。
(公共測量標準図式 P14)
上記文章をまとめると、地図上に記載されている文字や数字を注記と呼ぶということになります。
文章の内容と標準図式の内容が一致していますので、文章5は正しいと言えます。
文章1~5の正誤まとめ
各文章の正誤をまとめると、次の通りとなります。
- 誤
- 正
- 正
- 正
- 正
よって、明らかに間違っている選択肢は1なので、正解は「1」となります。
令和2年測量士補試験No.23のまとめ
地図編集の分野からの出題でした。
地図編集には定められたルールがありますが、地図の作成をしたことがない人はなかなかイメージがしづらいかもしれません。
しかし、ルールの理由を確認すると理にかなっていることも多く、理解がしやすい分野とも言えます。
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