必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和3年測量士補試験No.28の問題文
次の文は,公共測量における河川測量について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。
- 河川測量とは,河川,海岸等の調査及び河川の維持管理等に用いる測量をいう。
- 距離標設置間隔は,起点から河心に沿って,原則として 500 m とする。
- 水準基標は,水位標に近接した位置に設ける。
- 定期縦断測量における観測の路線は,水準基標から出発し,他の水準基標に結合する。
- 深浅測量において,水深が浅い場合は,ロッド又はレッドを用いる。
(令和3年測量士補試験問題集 No28)
令和3年測量士補試験No.28の解答・解説
「応用測量」の分野からの出題です。
各選択肢の正誤は以下の通りです。
- 正
- 誤
- 正
- 正
- 正
よって正解は「2」となります。
以下、各選択肢の詳しい解説です。
選択肢1について
「河川測量とは,河川,海岸等の調査及び河川の維持管理等に用いる測量をいう。」
この文章は正しいです。
国土地理院が発行している作業規程の準則の第5編 第3章 第1節 第570条に以下のような記載があります。
「河川測量」とは、河川、海岸等の調査及び河川の維持管理等に用いる測量をいう。
作業規程の準則(国土地理院)154Pより
よって選択肢の文章の内容と一致するので選択肢1は正しいということになります。
選択肢2について
「距離標設置間隔は,起点から河心に沿って,原則として 500 m とする。」
この文章は間違いです。
国土地理院が発行している作業規程の準則の第5編 第3章 第3節 第574条に以下のような記載があります。
距離標は、あらかじめ地形図上で位置を選定し、その座標値に基づいて、近傍の3級基準点等から放射法等により設置するものとする。
2 距離標設置間隔は、河川の河口又は幹川への合流点に設けた起点から、河心に沿って200メートルを標準とする。
3 距離標設置測量の観測は、次のとおり行うものとする。
一 TS等を用いる放射法の場合は、第551条第2項第一号の規定を準用して行うことができる。ただし、近傍に既知点がない場合は、3級基準点等を設置することができる。
二 キネマティック法、RTK法又はネットワーク型RTK法による場合は、第550条第3項第二号から第四号、第4項及び第5項の規定を準用する。
4 単点観測法において、位置情報サービス事業者で算出された任意地点の補正データを使用する場合、その地点から距離標までの距離を3キロメートル以内とする。
5 精度管理の結果は、精度管理表にとりまとめるものとする。
6 距離標の位置を示すため、点の記を作成する。作業規程の準則(国土地理院)154Pより
上記、作業規程の準則の内容より距離標の設置間隔は200mと規定されているので、選択肢の内容とは矛盾しています。
誤:500m
正:200m
よって選択肢2は間違いということになります。
河口・幹川・河心とは?
河口・幹川・河心はそれぞれ
- 河口(かこう)
- 幹川(かんせん)
- 河心(かしん)
と読み、それぞれの言葉の意味は
- 河口:川(河)が海や湖などへ流れ込む場所
- 幹川:河の中で最も主たる流れの部分
- 河心:川の両端を結んだ線の真ん中を、流れに沿った方向につないだ位置
となります。文章で書くと分かりづらい点もありますが、図で表すと以下のようになります。
距離標の設置イメージは?
距離標は200m間隔で河心に沿って設置していくということですので、配置していくイメージは以下のようになります。
選択肢3について
「水準基標は,水位標に近接した位置に設ける。」
この文章は正しいです。
国土地理院が発行している作業規程の準則の第5編 第3章 第4節 第576条に以下のような記載があります。
水準基標測量は、2級水準測量により行うものとする。
2水準基標は、水位標に近接した位置に設置するものとし、設置間隔は、5キロメートルから20キロメートルまでを標準とする。
3 精度管理の結果は、精度管理表にとりまとめるものとする。
4 水準基標の位置を示すため、点の記を作成する。作業規程の準則(国土地理院)155Pより
よって選択肢の文章の内容と一致するので選択肢3は正しいということになります。
選択肢4について
「定期縦断測量における観測の路線は,水準基標から出発し,他の水準基標に結合する。」
この文章は正しいです。
国土地理院が発行している作業規程の準則の第5編 第3章 第5節 第578条に以下のような記載があります。
定期縦断測量は、左右両岸の距離標の標高並びに堤防の変化点の地盤及び主要な構造物について、距離標からの距離及び標高を測定するものとする。
2 定期縦断測量は、原則として、観測の基準とする点は水準基標とし、観測の路線は、水準基標から出発し、他の水準基標に結合するものとする。
3 定期縦断測量は、平地においては3級水準測量により行い、山地においては4級水準測量により行うものとする。ただし、地形、地物等の状況によっては、4級水準測量に代えて間接水準測量により行うことができるものとし、その場合は第559条第8項の規定を準用する。
4 縦断面図データファイルは、定期縦断測量の結果に基づいて作成する。
5 縦断面図データファイルには、測点、単距離、追加距離、計画河床高、計画高水敷高、計画高水位、計画堤防高、最低河床高、左岸堤防高、右岸堤防高、水準基標、水位標、各種構造物等の名称、位置、標高等のデータを格納する。
6 縦断面図データを図紙に出力する場合は、横の縮尺は1,000分の1から100,000分の1まで、縦の縮尺は100分の1から200分の1までを標準とする。
7 精度管理の結果は、精度管理表にとりまとめるものとする。作業規程の準則(国土地理院)155Pより
よって選択肢の文章の内容と一致するので選択肢4は正しいということになります。
水準基標というのは高さの基準になる基準点のことで、水準点などを指します。
その水準点などから出発して距離標ごとに高さを測り、水準基標に結合することが作業規程の準則で定められています。
選択肢5について
「深浅測量において,水深が浅い場合は,ロッド又はレッドを用いる。」
この文章は正しいです。
国土地理院が発行している作業規程の準則の第5編 第3章 第7節 第582条に以下のような記載がありますので、一部を引用します。
水深の測定は、音響測深機を用いて行うものとする。ただし、水深が浅い場合は、ロッド又はレッドを用い直接測定により行うものとする。
2 測深位置又は船位の測定は、ワイヤーロープ、TS等又はGNSS測量機のいずれかを用いて行うものとし、測点間隔は次表を標準とする。(表は割愛)
3 ワイヤーロープを用いる測定は、測線にワイヤーロープを設置し水深を測定する。
4 TS等を用いる観測は、TS等を用い測量船を測線上に誘導し水深を測定する。作業規程の準則(国土地理院)156Pより
よって選択肢の文章の内容と一致するので選択肢5は正しいということになります。
音響測深機とは、音波を水中に発射して戻ってくるまでの時間を測って水深を求める装置です。
測量の分野では水深の測定で使用していますが、同じ技術を利用して船の運航を安全に進める技術としても使用されています。
それに対してロッド、レッドとは水準測量でも使用する標尺のようなものを直接水中に入れて測定することで水深を測るものです。
音響測深機ではかるよりも実際に水中までの長さを測れる道具を用いたほうが水深の測定では精度が高くなる、ということですね。
令和3年測量士補試験No.28のまとめ
応用測量の分野のうち、河川測量からの出題でした。
河川測量の分野の正誤問題は、作業規程の準則の内容のいくつかを抑えておけば解ける問題がほとんどです。
しっかりと読み込み、過去問を解くことでパターンを把握すれば得点を得られるので、色々な問題を解きましょう!
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