測量士補試験攻略

【ひと記事で丸わかり】令和2年(2020年)測量士補試験No.8の解答・解説~GNSS測量について~

あさひ
この記事を書いているのは現役の測量士です。本記事では令和2年測量士補試験のNo.8の内容について詳しく解説していきます。

必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください!

令和2年測量士補試験No.8の問題文

 次の a ~ e の文は,GNSS測量機を用いた基準点測量(以下「GNSS測量」という。)について述べたものである。(ア)~(オ)に入る語句の組合せとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。

  1. GNSS測量機を用いた 1 級基準点測量は,原則として,(ア)により行う。
  2. アンテナ位相特性の影響による誤差は,各観測点のGNSSアンテナを(イ)方向に整置することで軽減することができる。
  3. GNSS測量では,(ウ)が確保できなくても観測できる。
  4. (エ)の影響による誤差は,GNSS衛星から送信される 2 周波の信号を用いて解析することにより軽減することができる。
  5. GNSS衛星から直接到達する電波以外に,構造物などに当たって反射した電波が受信される現象を(オ)といい,測量の誤差の原因となる。
  1. (ア)結合多角方式(イ)不特定(ウ)観測点上空の視界(エ)対流圏(オ)マルチパス
  2. (ア)結合多角方式(イ)同一(ウ)観測点間の視通(エ)電離層(オ)マルチパス
  3. (ア)単路線方式(イ)同一(ウ)観測点間の視通(エ)対流圏(オ)サイクルスリップ
  4. (ア)単路線方式(イ)同一(ウ)観測点上空の視界(エ)対流圏(オ)サイクルスリップ
  5. (ア)単路線方式(イ)不特定(ウ)観測点間の視通(エ)電離層(オ)マルチパス

令和2年測量士補試験問題集 No.8)

令和2年測量士補試験No.8の解答・解説

汎地球測位システム測量」の分野からの出題です。

解答は「2です。以下、各文章の詳しい解説となります。

文章aについて

『GNSS測量機を用いた 1 級基準点測量は,原則として,(ア)により行う。』

この文章の(ア)には「結合多角方式」「単路線方式」が入りますが、今回は結合多角方式が正解です。

国土地理院が定める作業規程の準則の「第2章 基準点測量」の第1節 第23条の1には、以下の通り記載があります。

第23条(基準点測量の方式)
基準点測量は、次の方式を標準とする。
一 1級基準点測量及び2級基準点測量は、原則として、結合多角方式により行うものとする。
二 3級基準点測量及び4級基準点測量は、結合多角方式又は単路線方式により行うものとする。

作業規程の準則 P14)

今回の文章では「GNSS測量機を用いた 1 級基準点測量」となっているので、作業規程の準則の条文から原則として「結合多角方式」による行うことが正解と言えます。

よって(ア)には結合多角方式が入ります。

今回の問題はGNSS測量にフォーカスされていますが、手段に関係なく上記条文は適用されますので、1級基準点測量もしくは2級基準点測量では結合多角方式が基本原則であることはおさえておきましょう。

単路線方式が使用できるのは、3級基準点測量及び4級基準点測量からです。

作業規程の準則23条の1

単路線方式は、既知点(スタート)から既知点(ゴール)までの観測経路が一本の線(単路線)で続いていく方式のことです。

一方で結合多角方式は複数の路線がくっつきあって(=結合して)1つの路線のカタマリを形成している方式になります。

文章bについて

『アンテナ位相特性の影響による誤差は,各観測点のGNSSアンテナを(イ)方向に整置することで軽減することができる。』

この文章の(イ)には「不特定」「同一」が入りますが、今回は「同一」が正解です。

アンテナ位相特性については、国土地理院のHPに以下のように説明が載っています。グラフはリンク先を参考にしてください。

PCVとは、エポックごとに受信機に飛び込んでくるGNSS衛星からの電波の入射角(下図における横軸)に応じて受信位置が変化する(下図における縦軸)ことを言います。
この変化量は、アンテナ機種ごとによって異なり、アンテナ位相特性と呼んでいます。

国土地理院HP

上記文章をかみ砕いて理解すると「GNSS衛星から飛んでくる電波が受信機に入ってくる方向によって誤差の量が変わり、その誤差量が機種によって違う…その変化量(PCV)を含んだ特性をアンテナ位相特性と呼ぶよ」ということです。

つまり言い換えれば「GNSS衛星からの電波が受信機に入ってくる角度を各観測点である程度同じにしてあげれば、各観測点での受信位置の変化(PCV)の違いをある程度軽減することができる」ということです。

実際にどうすれば対応できるかですが、各観測点で設置したGNSSアンテナを同じ方向に設置すれば対応できます。

ぼくがいた会社では『アンテナに「北方向に向ける面はココ!」とわかるシールを貼っていて、そのシールを北方向に向ける』ことで統一していました。

よって(イ)には「同一」が入るのが正解です。

アンテナ位相特性

文章cについて

『GNSS測量では,(ウ)が確保できなくても観測できる。』

(ウ)には「観測点上空の視界」「観測点間の視通」のどちらかが入りますが、今回は「観測点間の視通」が正解です。

GNSS測量はその測量手法の特性から、以下のようなメリットがあります。

  • 上空が開けた場所であればある程度どこでも測量できる。
  • 各観測地点間の視通がとれていなくても、基準点測量を行える。

よって(ウ)には「観測点間の視通」が入るのが正解です。

GNSS測量の視通の特性

もう1つの選択肢の「上空の視界」は開けていなければGNSS測量はおこなうことができず、これがGNSS測量のデメリットの1つになります。

GNSS測量の特性2

文章dについて

『(エ)の影響による誤差は,GNSS衛星から送信される 2 周波の信号を用いて解析することにより軽減することができる。』

(エ)には「対流圏」「電離層」が入りますが、今回は「電離層」が入るのが正解です。

対流圏、電離層はどちらもはるか上空にある一定の空間のことを指します。

どちらもGNSS測量の精度に影響を及ぼす要因ですが、このうち2周波の信号を用いて軽減できるのは電離層です。

2周波の信号というのはL1波・L2波と呼ばれるもので、どちらもGNSS衛星から出てくる波にひと手間加えたものとなります。

L1波・L2波の理解については、令和4年の測量士補試験のNO8が参考になると思うので、興味がある方は一度確認してみてください。→【ひと記事で丸わかり】令和4年(2022年)測量士補試験No.8の解答・解説~GNSS測量~

電離層による遅延は周波数に遅延量が依存するので、2周波の信号を用いれば軽減できるということになります。

よって(エ)には電離層が入るのが正解です。

ちなみに対流圏による誤差を軽減する場合は、軽減するための補正量のモデルで軽減するなどの方法があります。

電離層と対流圏

文章eについて

『GNSS衛星から直接到達する電波以外に,構造物などに当たって反射した電波が受信される現象を(オ)といい,測量の誤差の原因となる。』

(オ)には「マルチパス」「サイクルスリップ」が入りますが、今回は「マルチパス」が正解です。

問題文のように「構造物などに当たって反射した電波が受信される現象」はマルチパスと言います。

GNSS衛星からの電波を受信する際に、通常とは間違った時間・距離で受信機まで到達するため、本来の結果とは差異が生じてしまいます。

そのためGNSS測量はビル群の多い都市部ではマルチパスの影響が非常に大きくなるため、注意が必要です。

よって、(オ)には「マルチパス」が入るのが正解です。

マルチパス

ちなみにサイクルスリップは衛星からの信号を受信機で連続的に捉えていたものが、一時的に止まってしまいデータの連続性がなくなってしまうことを言います。

(ア)~(オ)に入る語句まとめ

(ア)~(オ)には、それぞれ以下の語句が入ることがわかりました。

(ア)結合多角方式
(イ)同一
(ウ)観測点間の視通
(エ)電離層
(オ)マルチパス

上記語句の組み合わせと一致する選択肢は「2」なので正解は「2」となります。

令和2年測量士補試験No.8のまとめ

「汎地球測位システム」の分野からの出題でした。

GNSS測量は様々な誤差の要因があり、観測する際の場所を決めることがとても重要な測量です。

どうして誤差が起こるのか、それを理解しておくと今回の問題は楽に解けると思います。

その他の測量士補試験の問題に挑戦!

令和2年のNO.8の問題を確認したら、その他の問題にも挑戦していきましょう!

本ブログでは各問題の解説を年度ごとに一覧にまとめたページがありますので、ぜひその記事からその他の問題に挑戦してみてください!

問題解説のまとめ記事はコチラからどうぞ!→過去問に挑戦!現役測量士の解説を読んで測量士補試験を攻略しよう!

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