必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和2年測量士補試験No.18の問題文
次の文は,無人航空機(以下「UAV」という。)で撮影した空中写真を用いた公共測量について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。
- 使用するUAVは,安全確保の観点から,飛行前後における適切な整備や点検を行うとともに,必要な部品の交換などの整備を行う。
- 航空法(昭和27年法律第231号)では,人口集中地区や空港周辺,高度150 m以上の空域でUAVを飛行させる場合には,国土交通大臣による許可が必要となる。
- UAVによる公共測量は,地表が完全に植生に覆われ,地面が写真に全く写らないような地区で実施することは適切でない。
- UAVにより撮影された空中写真を用いて作成する三次元点群データの位置精度を評価するため,標定点のほかに検証点を設置する。
- UAVにより撮影された空中写真を用いて三次元点群データを作成する場合は,デジタルステレオ図化機を使用しないので,隣接空中写真との重複は無くてもよい。
(令和2年測量士補試験問題集 No.18)
令和2年測量士補試験No.18の解答・解説
「写真測量」の分野からの出題です。
解答は「5」となります。以下、UAVの概要と各文章の詳しい解説です。
UAVとは
UAVはUnmanned Aerial Vehicleの頭文字をとった略で、日本語では無人航空機、人によってはドローンと言ったりします。
UAVには人が乗らずにラジコンのように遠隔で操縦するため、飛行機やヘリコプターに比べて小型なものが多いです。
UAVによる測量は航空測量の一種で、UAVにデジカメやレーザースキャナを取り付けることで対象の写真や点群データなどを取得することができます。
文章1について
『使用するUAVは,安全確保の観点から,飛行前後における適切な整備や点検を行うとともに,必要な部品の交換などの整備を行う。』
上記文章は正しいです。
作業規程の準則の国土地理院が定めた公共測量における UAV の使用に関する安全基準(案)に、以下の通り記載があります。
3-4.UAV の整備及び点検
使用する UAV は、安全確保の観点から、以下の方法に基づき、整備や点検を行うことを原則とします。ただし、測量計画機関(発注元)と協議の上、一部の条件を変更することができるものとします。
(一部抜粋)
・定期点検の実施
・日頃からの整備の実施
・整備や点検の記録
・事故等の過度な衝撃への対応
・ファームウェア等のアップデート(公共測量における UAV の使用に関する安全基準(案)P13-14)
上記安全基準案では、安全確保の観点から整備や点検を日ごろから行うことを求められています。
よって、文章1は正しいと言えます。
また、整備や点検は安全確保の他に、作業の成果の精度を保つのにも重要な要素です。
国土地理院が定める作業規程の準則の229条(P76-77)では、精度確保のための点検項目についても定められています。
文章2について
『航空法(昭和27年法律第231号)では,人口集中地区や空港周辺,高度150 m以上の空域でUAVを飛行させる場合には,国土交通大臣による許可が必要となる。』
上記文章は正しいです。
航空法の第132条では、無人航空機(UAV)の飛行空域について、次のように規定しています。
第百三十二条 何人も、次に掲げる空域においては、無人航空機を飛行させてはならない。
一 無人航空機の飛行により航空機の航行の安全に影響を及ぼすおそれがあるものとして国土交通省令で定める空域
二 前号に掲げる空域以外の空域であつて、国土交通省令で定める人又は家屋の密集している地域の上空2 前項の規定は、次に掲げる場合には、適用しない。
一 航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全を損なうおそれがないものとして国土交通省令で定める飛行を行う場合
二 前号に掲げるもののほか、国土交通大臣がその飛行により航空機の航行の安全並びに地上及び水上の人及び物件の安全が損なわれるおそれがないと認めて許可した場合(航空法)
上記文章の無人航空機を飛行させてはならない国土交通省令で定める空域というのは、次の空域となります。
- 空港等の周辺
- 人口集中地区の上空
- 150m以上の上空
- 緊急用務空域
ただし、国土交通大臣から許可があれば飛行は可能です(上記文章の2ー二)。
よって、文章2の内容は正しいと言えます。
申請方法や詳しい禁止空域の範囲は、国土交通省のページから確認できます。→国土交通省HP
文章3について
『UAVによる公共測量は,地表が完全に植生に覆われ,地面が写真に全く写らないような地区で実施することは適切でない。』
上記文章は正しいです。
国土地理院が策定したUAV を用いた公共測量マニュアル(案)の第1編 総則の第9条に以下の通り記載があります。
第9条(適用地区)
UAV を用いた公共測量は、土工現場における裸地のような、対象物の認識が可能な地区に適用することを標準とする。
また、同マニュアルには解説も記載されており、次のような文章があります。
【解説】
本マニュアルで定める測量は、UAV による空中写真を用いて行うものであることから、当該空中写真では識別できない箇所を対象とした測量を行うことはできない。例えば、地表が完全に植生に覆われ、空中写真に植生の下の地面が全く写らないような地区での測量は不可能である。
地表が空中写真に写らなければ地表面の写真測量を行うことができないため、地表が完全に植生に覆われた土地は、写真測量に適しません。
よって文章3は正しいと言えます。
植生が多い環境で地表面の測量を行う場合は、写真による測量ではなくレーザーによる測量を利用することが必要となります。
文章4について
『UAVにより撮影された空中写真を用いて作成する三次元点群データの位置精度を評価するため,標定点のほかに検証点を設置する。』
上記文章は正しいです。
国土地理院が策定したUAV を用いた公共測量マニュアル(案)の第3編 第1章の第48条で「UAVによる空中写真からの三次元点群の作成」の作業工程を以下のように取り決めています。
(工程別作業区分及び順序)
第48条 UAV による空中写真を用いた三次元点群作成における工程別作業区分及び順序は、次の各号を標準とする。
一 作業計画
二 標定点及び検証点の設置
三 撮影
四 三次元形状復元計算
五 点群編集
六 三次元点群データファイルの作成
七 品質評価
八 成果等の整理(UAV を用いた公共測量マニュアル(案)P22)
工程の2番目で「標定点及び検証点の設置」が記載されており、UAVにより撮影された空中写真から三次元点群データを作成するためには、標定点と検証点の設置が必要であることが分かります。
また、同マニュアル(案)の第3編 第3章の第51条には以下の通り記載があります。
(要旨)
第51条 標定点及び検証点の設置とは、三次元形状復元計算に必要となる水平位置及び標高の基準となる点(以下第3編において「標定点」という。)及び三次元点群の検証を行う点(以下「検証点」という。)を設置する作業をいう。
2 標定点及び検証点には対空標識を設置する。(UAV を用いた公共測量マニュアル(案)P23)
このことから、検証点は三次元点群の位置検証に利用することもわかります。
よって、文章4は正しいと言えます。
文章5について
『UAVにより撮影された空中写真を用いて三次元点群データを作成する場合は,デジタルステレオ図化機を使用しないので,隣接空中写真との重複は無くてもよい。』
上記文章は間違いです。
国土地理院が定める作業規程の準則の第3編 第5章 第4節 第228条の8で、以下のような記載があります。
(撮影計画)
第228条8 同一コース内の隣接数値写真との重複度は60パーセント、隣接コースの数値写真との重複度は30パーセントを標準とする。
(作業規程の準則P76)
上記条文のように、隣接写真の重複度を定められているため、隣接空中写真の重複は必要です。
よって文章5は間違いであると言えます。
ちなみにコースとは、UAVを直線状に複数回飛ばしたときの1つの直線のことを言います。
文章1~5の正誤まとめ
これまでの各文章の解説から、それぞれの文章の正誤は以下のようになります。
1:正
2:正
3:正
4:正
5:誤
よって、明らかに間違っている選択肢は5なので、本問の正解は「5」となります。
令和2年測量士補試験No.18のまとめ
「写真測量」からの出題でした。
UAVは近年どんどん身近になっており、様々な場面で活躍している測量手法の1つです。
これから先、頻出になることは間違いないので、しっかりとおさえておきましょう!
令和2年測量士補試験No.18の類題
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令和3年測量士補試験問題集NO.20→問題文及び解説記事はコチラ
令和4年測量士補試験問題集NO.18→問題文及び解説記事はコチラ
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令和2年のNO.18の問題を確認したら、その他の問題にも挑戦していきましょう!
本ブログでは各問題の解説を年度ごとに一覧にまとめたページがありますので、ぜひその記事からその他の問題に挑戦してみてください!
問題解説のまとめ記事はコチラからどうぞ!→過去問に挑戦!現役測量士の解説を読んで測量士補試験を攻略しよう!
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