必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください!
目次
令和2年測量士補試験No.4の問題文
次の a ~ d の文は,地球の形状及び位置の基準について述べたものである。(ア)~(オ) に入る語句の組合せとして最も適当なものはどれか。次の中から選べ。
- 測量法(昭和24年法律第188号)に規定する世界測地系では,回転楕円体として(ア)を採用しており,地球上の位置は世界測地系に従って測定された地理学的経緯度及び平均海面からの高さで表すことができる。
- ジオイドは,重力の方向に(イ)であり,地球を回転楕円体で近似した表面に対して凹凸がある。
- 地心直交座標系の座標値から,回転楕円体上の緯度,経度及び(ウ)に変換できる。
- GNSS測量などによって得られるその場所の(ウ)から(エ)を減ずることによって(オ)を計算することができる。
- (ア)GRS80(イ)垂直(ウ)楕円体高(エ)ジオイド高(オ)標高
- (ア)GRS80(イ)垂直(ウ)ジオイド高(エ)標高(オ)楕円体高
- (ア)GRS80(イ)平行(ウ)標高(エ)楕円体高(オ)ジオイド高
- (ア)WGS84(イ)平行(ウ)標高(エ)ジオイド高(オ)楕円体高
- (ア)WGS84(イ)垂直(ウ)楕円体高(エ)ジオイド高(オ)標高
(令和2年測量士補試験問題集 No.4)
令和2年測量士補試験No.2の解答・解説
「測量に関する法規」の分野からの出題になります。
解答は「1」となります。以下、各語句の詳しい解説です。
(ア)について
「測量法(昭和24年法律第188号)に規定する世界測地系では,回転楕円体として(ア)を採用しており,地球上の位置は世界測地系に従って測定された地理学的経緯度及び平均海面からの高さで表すことができる。」
(ア)に入る語句は「GRS80」です。
GRS80について
国土地理院のHPには「日本では準拠楕円体として、ITRF座標系GRS80楕円体を採用しています。」と記載があります。(参考サイトはコチラ→日本の測地系(国土地理院))
問題文にある回転楕円体は、文字の通り平面に書いた楕円体を回転させてできる立体的な形状のことです。
地球は本来、じゃがいもみたいに表面がデコボコしていて綺麗な回転楕円体の形状をしていないのですが、地球上の位置の基準を得るために採用します。
本来はデコボコしているけど疑似的に滑らかな形状として見た回転楕円体のことを準拠楕円体とよび、その採用した準拠楕円体の種類の名前がITRF座標系GRS80楕円体ということになります。
よって(ア)には「GRS80」が入ります。
ちなみに、GRS80は「Geodetic Reference System 1980」の略称です。
WGS84について
問題文に出てきたWGS84は「World Geodetic System 1984」の略で、回転楕円体の一種です。
GRS80楕円体と少しだけ大きさが違いますが、ほぼ同じ形状です。
主にGPSに関して活用されています。
(イ)について
「ジオイドは,重力の方向に(イ)であり,地球を回転楕円体で近似した表面に対して凹凸がある。」
(イ)に入る語句は「垂直」です。
ジオイドについて
ジオイドとは、平均海面とその平均海面を陸地内部まで延長した面のことを言います。
ジオイドの基準となる平均海面は、重力の影響が0の安定している(潮の満ち引きがない)状態のときの海面の高さです。
ジオイド面と重力の方向の関係
潮の満ち引きがない安定した状態のときは重力がジオイド面を真上から押さえているイメージなので、ジオイド面は重力と直交していると言えます。
よって、ジオイド面と重力は直交しているので、ジオイド面は重力の方向に垂直している関係であると言えます。よって、(ア)には「垂直」が入ります。
また、地球の重力は細かく見れば場所によって違うため、平均海面の地点を繋ぎ合わせるとデコボコな形状となります。
ジオイドに関する説明は、国土地理院及びみちびき(準天頂衛システム)のHPが参考になりますので、興味がある方はご覧になってみてください。
→測量に関するミニ知識(国土地理院)
→ジオイドとは何か? [前編](みちびき(準天頂衛星システム))
(ウ)について
「地心直交座標系の座標値から,回転楕円体上の緯度,経度及び(ウ)に変換できる。」
(ウ)には「楕円体高」が入ります。
地心直交座標系について
地心直交座標系は原点(0,0,0)を地球の重心位置として、(X,Y,Z)の3つの軸の数値で位置を表すものです。
- (X,Y,Z)=(○○m, △△m,✕✕m)
のように表します。
緯度経度および楕円体高について
緯度と経度および楕円体高の表現では
- 東経(西経):○○°
- 北緯(南緯):○○°
- 楕円体高:○○m
のように表します。
地心直交座標系と緯度経度・楕円体高の変換
- 地心直交座標系
- 緯度経度・楕円体高
この2つはそれぞれの値を変換する式が存在しています。
よって「地心直交座標系」から変換できるのは「緯度・経度・楕円体高」となりますので、(ウ)には「楕円体高」が入ります。
ちなみに、卯酉線は「ぼうゆうせん」と読みます。
(エ)および(オ)について
「GNSS測量などによって得られるその場所の(ウ)から(エ)を減ずることによって(オ)を計算することができる。」
(エ)には「ジオイド高」、「オ」には「標高」が入ります。
GNSS測量で得られる高さ
GNSS測量では、上空に存在する衛星を利用することで設置したGNSSの
- 緯度
- 経度
- 楕円体高
を結果として得ることができます。
よって、GNSS測量で得られる成果の高さは「楕円体高」です。
楕円体高・ジオイド高・標高の関係
楕円体高・ジオイド高・標高はそれぞれ次のような高さです。
- 楕円体高:回転楕円体から地表面までの高さ
- ジオイド高:回転楕円体から地球の平均海面およびそれを陸地内部まで延長した面までの高さ
- 標高:地球の平均海面およびそれを陸地内部まで延長した面から地表面までの高さ
上記関係は、計算式としては次のようにまとめられます。
- 標高=楕円体高-ジオイド高
これらを図でまとめると次のように考えられます。
よって「楕円体高」から「ジオイド高」を減ずる(引き算する)ことで「標高」を計算することができるので(エ)には「ジオイド高」(オ)には「標高」が入ります。
(ア)~(オ)に入る語句まとめ
今までの解説から(ア)~(オ)にはそれぞれ
- (ア)GRS80
- (イ)垂直
- (ウ)楕円体高
- (エ)ジオイド高
- (オ)標高
が入ることがわかりました。
よって正解の選択肢は「1」となります。
令和2年測量士補試験No.4のまとめ
「測量に関する法規」からの出題でした。
本問題は様々な測量の基礎となる部分が多いので必ず習得が必要な内容です。
ここで疑問を残すと今後の勉強の理解に影響が出るかもしれませんので、しっかりと理解していきましょう!
令和2年測量士補試験No.4の類題
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令和3年測量士補試験問題集NO.4→問題文及び解説記事はコチラ
令和4年測量士補試験問題集NO.4→問題文及び解説記事はコチラ
さいごに
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