必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和4年測量士補試験No.10の問題文
次の文は,水準測量を実施するときに留意すべき事項について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。
- レベル及び標尺は,作業期間中においても適宜,点検及び調整を行う。
- 標尺は 2 本 1 組とし,往路及び復路の出発点で立てる標尺を同じにする。
- 往復観測を行う水準測量において,水準点間の測点数が多い場合は,適宜,固定点を設け,往路及び復路の観測に共通して使用する。
- 自動レベル及び電子レベルについては,円形水準器及び視準線の点検調整のほかに,コンペンセータの点検を行う。
- 三脚の 2 脚を進行方向に平行に設置し,そのうちの特定の 1 本を常に同一の標尺に向けて整置する。
(令和4年測量士補試験問題集 No10)
令和4年測量士補試験No.10の解答・解説
「水準測量」の分野からの出題です。
解答は「2」となります。以下、各選択肢の詳しい解説です。
選択肢1について
『レベル及び標尺は,作業期間中においても適宜,点検及び調整を行う。』
この文章は正しいです。
国土地理院が定める作業規程の準則の第1編 第14条の3に以下の通り記載があります。
第14条の3
作業者は、観測に使用する主要な機器について、作業前及び作業中に適宜点検を行い、必要な調整をしなければならない。(作業規程の準則 P9)
上記条文の主要な機器は、水準測量ではレベル・標尺などが当てはまります。
つまり、作業前と作業期間中には適宜レベルと標尺の点検や調整をしなければなりません。
よって選択肢1の文章は正しいということになります。
選択肢2について
『標尺は 2 本 1 組とし,往路及び復路の出発点で立てる標尺を同じにする。』
この文章は間違いです。
まず標尺を1本しか使用しない場合、その使用した標尺に異常があれば観測結果そのものが正しい成果とは言えなくなってしまいます。
また、前視と後視を観測するごとに毎回1本の標尺を据えていたら効率も悪いです。
そのため2本1組で標尺を使用することで標尺そのものが持つ誤差をなるべくカバーするのが大事です。
その一方で2本1組で標尺を使用したとしても、零点誤差を防ぐための前提の決まりである
- 標尺の設置回数を奇数回にする
- レベルを据える回数を偶数にする
といったものを考慮する場合、往観測と復観測の最初に立てる標尺にも注意が必要です。
もしも往観測と複観測のそれぞれの出発点で同一の標尺を立てた場合、標尺そのものが持つ誤差が同じ地点に影響します。
そのため往観測と複観測のそれぞれの出発点で別々の標尺を立てることで、発生する誤差の要因を同一の標尺が持つ誤差にしないようにして、結果的に成果を安定させているのですね。
よって
- 標尺を2本1組とする
- 往観測の出発点に立てた標尺は、復観測の出発点に立てない
の2つは正しい決まりとなります。
本問の文章では
- 2本1組とする
- 往路及び復路の出発点で立てる標尺を同じにする
としており、本来であれば「往路及び復路の出発点で立てる標尺を変更する」としなければいけない部分に矛盾が生じてしまっています。
よって選択肢2の文章は間違いであると言えます。
解説に出てきた零点誤差については、令和3年のNO.10の解答記事などで詳しく解説しています。
理解を深めたい方はそちらも参考にしてみてください。
参考記事→【過去問がひと記事で丸わかり】令和3年測量士補試験No.10の解答・解説
選択肢3について
『往復観測を行う水準測量において,水準点間の測点数が多い場合は,適宜,固定点を設け,往路及び復路の観測に共通して使用する。』
この文章は正しいです。
国土地理院が定める作業規程の準則の第2編 第3章 第5節 第64条の2の六に以下の通り記載があります。
第64条の2の六
往復観測を行う水準測量において、水準点間の測点数が多い場合は、適宜固定点を設け、往路及び復路の観測に共通して使用するものとする。(作業規程の準則 P33)
上の文章を図で表すと以下の通りです。
往路と復路の観測では、出発点と終着点以外は基本的に同じ個所に標尺を立てる必要がありませんが、水準点間の設置回数が増えてしまった場合は途中で固定点を設ける必要があります。
この固定点は「水準測量の往復観測の結果が許容誤差に入らなかった場合の対策」のために必要です。
もしも水準点間の設置回数が多い観測路線の観測結果が既定の許容誤差に収まらなかった場合、どうなるのでしょうか?
またもう一度、水準点間の設置回数が多く、長い路線を水準測量しなければなりません…想像するととても面倒くさいですね…。
そんなときに観測路線の途中に固定点を設置しておくと、どこでミスをして誤差が大きくなったのかを水準点から固定点までの間で確認することができます。
上記理由から、選択肢3の文章は正しいということになります。
選択肢4について
『自動レベル及び電子レベルについては,円形水準器及び視準線の点検調整のほかに,コンペンセータの点検を行う。』
この文章は正しいです。
国土地理院が定める作業規程の準則の第2編 第3章 第5節 第63条の2の二に以下の通り記載があります。
第63条の2の二
自動レベル、電子レベルは、円形水準器及び視準線の点検調整並びにコンペンセ-タの点検を行うものとする。(作業規程の準則 P32)
上記文章は選択肢4の文章の内容と意味が一致するため、選択肢4は正しいということになります。
この点検は
- 観測の着手前
- 1級水準測量及び2級水準測量では、観測期間中おおむね10日ごと
に作業が必要です。
選択肢5について
『三脚の 2 脚を進行方向に平行に設置し,そのうちの特定の 1 本を常に同一の標尺に向けて整置する。』
この文章は正しいです。
上記文章は、水準測量で発生する「鉛直軸誤差」に対応するために必要な行動です。
文章を図で表すと以下のようになります。
上の図のように
- 進行方向に2脚(緑色の脚と青の脚)を平行に設置
- 特定の一本を常に同一の標尺(A標尺に緑色の脚もしくは標尺に青色の脚)に向けて設置
としていると鉛直軸誤差が常に同じ標尺に対して影響するようになるので、高さ計算でその誤差をなくすことができます。
よって、選択肢5の文章は正しいということになります。
この三脚の設置の様子は近代測量150年記念切手の上、右から2番目の絵でも確認できます。
画像が近代測量150年記念切手(郵便局の近代測量150年記念切手のページより参照)
令和4年測量士補試験No.10のまとめ
「水準測量」からの出題でした。
水準測量に関する作業の決まりごとは毎年のように出題があるとても重要な問題です。
類題も含み様々なパターンの過去の問題を解いて、必ず対応出来るようにしましょう!
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