必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
次のa~eの文は,空中写真測量の特徴について述べたものである。明らかに間違っているものだけの組合せはどれか。次の中から選べ。
- 現地測量に比べて,広域な範囲の測量に適している。
- 高塔や高層建物は,空中写真の中心に向かって倒れこむように写る。
- 同一撮影条件において,画面距離のみが異なるカメラを比較した場合,画面距離の短いカメラを使用した方が一枚の空中写真に写る地上の範囲は広くなる。
- デジタル航空カメラで撮影した場合,対地高度が下がるほど,地上画素寸法は大きくなる。
- 空中写真に写る地物の形状,大きさ,色調,模様などから,土地利用の状況を知ることができる。
- a,c
- a,e
- b,d
- b,e
- c,d
(令和4年測量士補試験問題集 No20)
目次
令和4年測量士補試験No.20の解答・解説
「写真測量」の分野からの出題です。
解答は「3」となります。以下、各選択肢の詳しい解説です。
選択肢aについて
『現地測量に比べて,広域な範囲の測量に適している。』
上記文章は正しいです。
現地測量とは、いわゆるトータルステーションやGNSS測量機を用いた局所的な測量となります。
一方で、空中写真測量は航空機を利用して空中から広域の範囲を測量するものです。
よって、現地測量と比較すれば広域な範囲に適していると言えます。
よって選択肢aは正しいです。
また、空中写真測量は現地測量に比べて広域な範囲を測量できるというメリットがある一方で、以下のようなデメリットもあります。
- 「山地や公園の木の下」や「建物の屋根の下」など空中から見たときに陰になる部分は測量できない
- 現地測量に比べて精度が低い
- 天候や空中の環境に測量の進捗を左右される
目的に合わせて、かつそれぞれのメリットやデメリットを考慮したうえで、手法を変えていくことが測量をするうえで重要となります。
選択肢bについて
『高塔や高層建物は,空中写真の中心に向かって倒れこむように写る。』
上記文章は間違いです。
実際に国土地理院で確認できる空中写真を例にとって確認してみましょう!
空中写真の中心から、建物が外側に向かって傾いていることが分かると思います。
よって、
『高塔や高層建物は,空中写真の中心に向かって倒れこむように写る。』
という文章は間違いで
『高塔や高層建物は,空中写真の外側に向かって倒れこむように写る。』
というのが正しいと考えられます。
よって選択肢bは間違いです。
もしも試験中などでこの考え方が分からなくなったときは、机の上にペンや鉛筆を立ててイメージしてみましょう!
自分の片目を空中写真の中心、ペンや鉛筆を高塔や高層建物と例えてみると、鉛筆やペンも机の外側に向かって倒れていくことが確認できます。
選択肢cについて
『同一撮影条件において,画面距離のみが異なるカメラを比較した場合,画面距離の短いカメラを使用した方が一枚の空中写真に写る地上の範囲は広くなる。』
上記文章は正しいです。
まず、画面距離というのは「カメラのレンズから撮像面までの距離」を指します。
そして、画面距離と対地高度(レンズから地表面までの距離)の関係性は次の画像のように表すことができます。
本問では、撮影条件が同じということなので対地高度を同じにして画面距離のみを変えてみると写る地上の範囲の違いがわかります。
上図から同一撮影条件の場合、画面距離が短いカメラの方が空中写真に写る範囲が広くなることが分かりますね。
よって、選択肢cは正しいということになります。
選択肢dについて
『デジタル航空カメラで撮影した場合,対地高度が下がるほど,地上画素寸法は大きくなる。』
上記文章は間違いです。
市販のデジタルカメラと同じように、デジタル航空カメラにも画素数というものがあります。
画素とは、画像を構成している1つ1つの小さな四角のことで、その1つの画素の長さを素子寸法と言います。
また地上画素寸法とは、写真に写っている1つの画素の長さが地上の何メートル分にあたるかを示しています。
この素子寸法と地上画素寸法の関係は以下の画像のようになります。
選択肢dの文章のように、対地高度が下がると地上画素寸法は大きくなるのでしょうか?
対地高度の違いによって、地上画素寸法がどのようになるか見てみましょう。
上図のように、対地高度が下がると地上画素寸法は小さくなることが分かります。
よって、
『デジタル航空カメラで撮影した場合,対地高度が下がるほど,地上画素寸法は大きくなる。』
という文章は間違いで
『デジタル航空カメラで撮影した場合,対地高度が下がるほど,地上画素寸法は小さくなる。』
『デジタル航空カメラで撮影した場合,対地高度が上がるほど,地上画素寸法は大きくなる。』
という文章が正しいと言えます。
よって、選択肢dは間違いと言えます。
ちなみに、地上画素寸法が小さいということはそれだけ画質が良い画像と言えます。
例えば15m×15mの範囲の空中写真を撮影した場合、地上画素寸法3mだと25個の画素で表すことができますが、地上画素寸法5mだと9個の画素でしか表すことができません。
遠くから撮影するよりも近くから撮影したほうがきれいな写真が撮影できることはイメージしやすいと思うので、
地上画素寸法が小さい=画質が良い
ということを覚えておけば、選択肢dの文章が間違っていることはすぐにわかるようになります。
選択肢eについて
『空中写真に写る地物の形状,大きさ,色調,模様などから,土地利用の状況を知ることができる。』
この文章は正しいです。
例えば、googlemapやyahoo地図で空中写真を見ると、どこが道路でどこが住宅地か、どこが山地で、どこが公園かなどすぐに判断することができますよね。
同じようなことを、より専門的な知見で土地利用の状況などを確認する仕事もあります。
国土地理院のHPでも、土地利用の状況を確認していることを紹介しているページがあるので、確認してみてください。
過去の空中写真と比べて土地利用の変化を調べる(国土地理院)
よって、選択肢eは正しいと言えます。
選択肢a~eの正誤まとめ
今までの内容から、本問の選択肢のそれぞれの正誤は以下の通りとなります。
- 選択肢a:正しい
- 選択肢b:間違い
- 選択肢c:正しい
- 選択肢d:間違い
- 選択肢e:正しい
以上の条件を満たしている選択肢の番号は「3」となるので、選択肢「3」が正解となります。
令和4年測量士補試験No.20のまとめ
「写真測量」からの出題でした。
航空測量の原理から、各パラメータとの関係を考える内容が多かったです。
航空測量ではどのようなパラメータが関係してくるかを把握しておかないと、こういった問題や計算問題は解けません。
必ず理解するようにしておきましょう!
その他の測量士補試験の問題に挑戦!
令和4年のNO.20の問題を確認したら、その他の問題にも挑戦していきましょう!
本ブログでは各問題の解説を年度ごとに一覧にまとめたページがありますので、ぜひその記事からその他の問題に挑戦してみてください!
問題解説のまとめ記事はコチラからどうぞ!→過去問に挑戦!現役測量士の解説を読んで測量士補試験を攻略しよう!
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