必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和3年測量士補試験No.20の問題文
次の文は,無人航空機(以下「UAV」という。)を用いた測量について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。
- UAV の使用にあたっては,UAV の運航に関わる法律,条例,規制などを遵守し,UAVを安全に運航することが求められる。
- UAV による撮影は事前に計画をたて,現場での状況に応じて見直しが生じることを考慮しておく。
- 空港周辺以外であれば,自由に UAV を用いた測量を行うことができる。
- 成果品の種類や,その必要精度などに応じて,適切に作業を実施することが求められる。
- 一般に,UAV は有人航空機と比べ低空で飛行ができることから,局所の詳細なデータ取得に適している。
(令和3年測量士補試験問題集 No20より)
令和3年測量士補試験No.20の解答・解説
「写真測量」の分野からの出題です。
それぞれの選択肢の正誤は以下の通りとなります。
- 〇
- 〇
- ✕
- 〇
- 〇
明らかに間違っている選択肢を選ぶ問題ですので、正解は「3」となります。
以下、各選択肢の詳しい解説です。
選択肢1について
『UAV の使用にあたっては,UAV の運航に関わる法律,条例,規制などを遵守し,UAVを安全に運航することが求められる。』
この内容は正しいです。
国土交通省 国土地理院が平成28年3月に発行している「公共測量における UAV の使用に関する安全基準(案) 」の中で、以下のような記載があります。
公共測量において UAV を使用する測量作業機関は、航空法その他のUAV の運航に関わる法律、条例、規制などについても、それらの理念を十分に理解し、遵守し、UAV を安全に運航するよう努めることが必要です。
(公共測量における UAV の使用に関する安全基準(案) 1.はじめに(2~3P))
上記文章は選択肢の文章と内容が一致しておりますので、選択肢1は「正しい」と言えます。
選択肢2について
『UAV による撮影は事前に計画をたて,現場での状況に応じて見直しが生じることを考慮しておく。』
この内容は正しいです。
国土交通省 国土地理院が平成28年3月に発行している「公共測量における UAV の使用に関する安全基準(案) 」の中で、以下のような記載があります。
実際の運航は、基本的には、あらかじめ作成した運航計画に基づいて UAV の運航を行うことが求められますが、運航を行う当日の現場の状況(気象状況、イベント等の実施状況等)によって、計画の変更が必要となる場合があります。このため、現場班長は、作業現場周辺の気象情報を収集するとともに、作業現場周辺における作業当日の状況(運航予定範囲の電波や地磁気の状況、イベントの有無、道路等における交通状況、周辺への第三者の立ち入りの状況等)について確認することが必要です。
(公共測量における UAV の使用に関する安全基準(案) 8-2.運航計画の最終確認と登録(32P))
「あらかじめ計画を立てる点」「当日の状況を確認確認したうえで計画の変更が必要になる場合」などについて言及していますので、選択肢の文章の内容と一致しています。
よって選択肢2は「正しい」といえます。
選択肢3について
『空港周辺以外であれば,自由に UAV を用いた測量を行うことができる。』
この内容は間違いです。
国土交通省のHPには「無人航空機の飛行ルール」というページがあり、その資料の一部に下図のような飛行禁止区域のまとめがあります。
空港周辺はもちろん、その他にも以下の場所が飛行禁止区域としてあがっています。
- 緊急用務区域
- 150m以上の上空
- DID(人口集中地区)
- 国の重要な施設等の周辺
- 外国公館の周辺
- 防衛関係施設の周辺
- 原子力事業所の周辺
よって空港周辺以外にも自由にUAVを用いた測量を行うことができない箇所がありますので、選択肢3は「間違い」といえます。
選択肢4について
『成果品の種類や,その必要精度などに応じて,適切に作業を実施することが求められる。』
この内容は正しいです。
UAVによる測量の成果物は
- 空中写真
- 空中写真を使用した数値地形図データ
- 数値写真
- 三次元点群データ
など様々なものがあります。
また、求められる精度はデータの使用目的によって変わってきます。
この成果物や必要精度は作業規程の準則の
- 第3編 第5章
- 第4編 第3章
などを参考にしてもらうと、より詳しい内容が分かると思います。参考リンクはこちらです→作業規程の準則(国土地理院)
また、成果物や精度が違えば作業内容も変わってきます。
国土地理院が平成29年3月に作成した「UAVを用いた公共測量マニュアル」の3~4P(作業の流れ)の中でも
- UAV による空中写真を用いた数値地形図作成
- UAV による空中写真を用いた三次元点群作成
でそれぞれ作業工程が違うことを確認できます。参考リンクはコチラです→UAVを用いた公共測量マニュアル
よって選択肢4の文章と一致いたしますので、選択肢4は「正しい」と言えます。
選択肢5について
『一般に,UAV は有人航空機と比べ低空で飛行ができることから,局所の詳細なデータ取得に適している。』
この内容は正しいです。
有人航空機とUAVでは飛行できる定められた高さが違ってきます。
UAVの方が低空を飛行できるので、対象との距離を近づけてデータ取得をすることが可能です。
対象との距離を近づけてデータ取得をできるということは
- 地上画素寸法が短い(=画質が高い)写真が撮影できる
- 点間距離が近い(=密度が濃い)点群データを取得できる
ということになります。
また、有人航空機に比べてより細かな撮影計画を立てられるのも利点です。
一方で、バッテリーをもとに駆動しているため有人航空機に比べて飛行時間が短いという欠点もあります。
そのため、UAVは局所の詳細なデータ取得に適していると言えます。
よって選択肢5の文章と一致いたしますので、選択肢5は「正しい」と言えます。
令和3年測量士補試験No.20のまとめ
「写真測量」からの出題でした。
UAVの問題は令和3年で初めて出題されたタイプの問題でしたね。
これからの測量業界はUAVによる測量も主流の方法の1つになってきますので、今後も出題されることが多いに予想されます。
作業規程の準則や国土地理院によりさだめられたUAVのルールに目を通しておき、対応できるようにしておきましょう!
令和3年測量士補試験No.20の類題
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令和2年測量士補試験問題集NO.18→問題文及び解説記事はコチラ
令和4年測量士補試験問題集NO.18→問題文及び解説記事はコチラ
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