必要な用語や手法に関する解説も一緒におこなっていきますので、参考書代わりに本記事を使ってみてください。
目次
令和4年測量士補試験No.5の問題文
次の文は,公共測量におけるトータルステーション(以下「TS」という。)を用いた基準点測量の精度について述べたものである。明らかに間違っているものはどれか。次の中から選べ。
- 多角網の外周路線に属する新点は,外周路線に属する隣接既知点を結ぶ直線から外側 40°以上の地域内に選点し,路線の中のきょう角を 60°以下にする。
- 多角路線内の未知点数が多いほど,水平位置の精度は低下する。
- 正反観測を行うことにより,器械の視準軸誤差,水平軸誤差,目盛盤の偏心誤差が軽減される。
- 既知点と既知点を結合させた点検路線で,閉合差を計算し,観測値の良否を判定する。
- TS で測定される斜距離には,反射鏡定数の誤差などの測定距離に比例しない誤差が含まれる。
(令和4年測量士補試験問題集 No5)
令和4年測量士補試験No.5の解答・解説
「多角測量」の分野からの出題です。
解答は「1」となります。
以下、各選択肢についての詳しい解説です。
選択肢1について
『多角網の外周路線に属する新点は,外周路線に属する隣接既知点を結ぶ直線から外側 40°以上の地域内に選点し,路線の中のきょう角を 60°以下にする。』
この選択肢の文章は間違いです。
国土地理院が定める基準点測量作業規程の第5条運用基準の8および9に、以下の通り記載があります。
8.多角網の外周において、隣接の2既知点を結ぶ線の外側に新点及び再測量を行う基準点を選点する場合は、同線から 40 度以内を標準とする。
9.多角網の路線の中の夾角は、60 度以上を原則とする。(基準点測量作業規程 P6)
上記条文から、
- 多角網の外周に新点を設置する場合は同線から40度以内を標準
- 多角網の路線の中の夾(きょう)角は60度以上を原則
を原則として定めています。
それに対して選択肢1の文章では
- 多角網の外周路線に属する新点は,外周路線に属する隣接既知点を結ぶ直線から外側 40°以上の地域内に選点
- 路線の中のきょう角を 60°以下
としてしまっており、条文の内容と矛盾します。
よって選択肢1の文章は間違いということになります。
ちなみに本条文の内容を図で表すと以下のようになります。
選択肢2について
『多角路線内の未知点数が多いほど,水平位置の精度は低下する。』
この文章は正しいです。
多角路線内に既知点が多い方が、各既知点の間の路線で精度の確認を行うことができます。
つまり、既知点が多い方が精度が向上すると言えます。
逆に未知点数が増えるとその分の精度の確認が必要であったり、各未知点の観測の誤差が蓄積してしまうので精度は低下してしまいます。
よって選択肢2の文章は正しいということになります。
選択肢3について
『正反観測を行うことにより,器械の視準軸誤差,水平軸誤差,目盛盤の偏心誤差が軽減される。』
この文章は正しいです。
それぞれの誤差について説明すると、以下のようになります。
視準軸誤差
TS の視準軸と望遠鏡の視準線が一致していないために生じる誤差
水平軸誤差
TS の鉛直軸と鉛直線の方向が一致していないために生じる誤差
目盛盤の偏心誤差
鉛直軸上に目盛盤中心がないために起こる誤差
どの誤差も、正反観測を行うことで誤差が軽減されます。
よって選択肢3の文章は正しいということになります。
選択肢4について
『既知点と既知点を結合させた点検路線で,閉合差を計算し,観測値の良否を判定する。』
この文章は正しいです。
国土地理院が定める基準点測量作業規程の第20条(点検計算)に、以下の通り記載があります。
方向角とその閉合差、座標とその閉合差、標高とその閉合差及び基線ベクトルの閉合差又は較差の計算を行うものとする。
2 閉合差又は較差が所定の許容範囲を超えたときは、監督職員の指示により、適切な措置を講ずるものとする。(基準点測量作業規程 P14)
さらに、基準点測量作業規程の第20条運用基準の(3)に以下の通り記載があります。
(3) 閉合差の計算は次のとおり行う。
1) 方向角、座標及び標高の閉合差の計算は、すべての単位多角形及び次に掲げる条件により選定された点検路線のすべてについて行う。
① 点検路線は、既知点と他の既知点とを結合するなるべく短い路線であること。
② すべての既知点は、少なくとも一つの点検路線で結合されていること。
③ すべての単位多角形については、少なくともその路線の一つが点検路線と重複していること。(基準点測量作業規程 P14)
基準点測量作業規程の上記条文をまとめ、一部を要約して抜粋すると
- 既知点同士が結ばれた点検路線で閉合差を計算すること
- 計算した閉合差が所定の許容値を超えた場合は適切な措置を講ずること
が定められています。
この条文の内容は
- 既知点と既知点を結合させた点検路線で,閉合差を計算し、
- 観測値の良否を判定する。
という選択肢の文章と一致していますので、選択肢4は正しいということになります。
選択肢5について
『TS で測定される斜距離には,反射鏡定数の誤差などの測定距離に比例しない誤差が含まれる。』
この文章は正しいです。
TSには反射鏡定数の他に、器械定数の誤差などがあります。
どちらも器械そのものにもともとつきまとっている誤差であり、測定距離がどんなに変わっても一定の数値の誤差となります。
つまり、測定距離に比例しない誤差であるということです。
よって、選択肢5の文章は正しいということになります。
令和4年測量士補試験No.5のまとめ
「多角測量」からの出題でした。
基準点測量に関する問題でしたが、過去問からの流用がほとんどです。
多角測量は測量士補という職務をこなすうえで、とても重要な知識です。
ぜひ、この機会にルールが定められている理由も含めて覚えてもらえればと思います!
令和4年測量士補試験No.5の類題
他年度の測量士補試験に出題された本問の類題です!ぜひチャレンジしてみてください!
令和3年測量士補試験問題集NO.5→問題文及び解説記事はコチラ
その他の測量士補試験の問題に挑戦!
令和4年のNO.5の問題を確認したら、その他の問題にも挑戦していきましょう!
本ブログでは各問題の解説を年度ごとに一覧にまとめたページがありますので、ぜひその記事からその他の問題に挑戦してみてください!
問題解説のまとめ記事はコチラからどうぞ!→過去問に挑戦!現役測量士の解説を読んで測量士補試験を攻略しよう!
さいごに
本ブログを参考にしていただきありがとうございます。
内容に関して不明な点、ご質問、指摘事項、感想などございましたら、コメントやメールにてご連絡ください。
励みになるとともに、本ブログをよりたくさんの皆様に有益なものにできると考えています。
ぜひお待ちしております。
お問い合わせ先:surveyor_kenzo☆aol.com
※ご連絡の際は☆を@に変更してください。